295 暖めるために入って来てと言ったのに

彼女は慌てて堪え、神崎卓礼の胸に飛び込み、両腕で彼の首をきつく抱きしめた。「会いたかった！」

神崎卓礼は声を立てずに笑い、抑えきれない様子で、黒い瞳から優しい光を放った。

そうだよね？

彼もこの子に会いたくて、毎晩次の瞬間にでも飛んでいけたらと思うほどだった。

今週は本当に忙しく、一日三、四時間しか眠れなかったが、なんとか六日分の仕事を四日間に圧縮して終わらせた。

午後にロサンゼルスからB市に戻ったばかりで、身なりを整える暇もなく、時差ボケも直らないまま、ここまで馬車馬のように走ってきた。道乃漫に会いたくて、週末を彼女と過ごすためだった。

彼の体にはまだ外の寒気が残っており、道乃漫は薄手のパジャマ姿だった。

しばらくすると、神崎卓礼の体の冷たさが道乃漫のパジャマを通り抜けた。

神崎卓礼は彼女の背中をポンポンと叩いた。「いい子だから、僕の体が冷たいから、暖まってからまた抱きしめよう。風邪を引かせちゃうから」

道乃漫は首を振った。「離さない」

この子は、こんなにも彼のことを？

神崎卓礼は嬉しそうに顔を下げて彼女にキスをした。

すると、道乃漫が彼のコートを脱がそうとしているのに気付いた。

「随分と急いでるね？」神崎卓礼は言いながら、顔には隠しきれない喜びを浮かべていた。

この子が、こんなに積極的だなんて！

道乃漫の動きが遅いのが気になって、神崎卓礼は協力的に素早くコートを脱ぎ、シャツ姿になった。

「……」道乃漫は呆れた様子で彼を見つめた。この男、何を考えているの！

彼女は布団をめくり、隣を叩いた。「暖まってもらおうと思っただけよ。他意はないわ」

神崎卓礼：「……」

彼は布団に入り、こっそりとベルトを外した。

しばらくすると、ズボンが布団の外に静かに投げ出された。

道乃漫はすぐに様子がおかしいことに気付いた。神崎卓礼は厚かましく説明した。「今日はロサンゼルスからB市に戻ってきたばかりで、着替える暇もなかったんだ。シャツはまだいいけど、コートもズボンも汚れてるから」

道乃漫：「……」

神崎卓礼は笑いながら彼女を抱き寄せた。「寝よう。僕がそんな野獣みたいな人間に見える？君は一日中撮影で疲れているんだから、そんな無理させられないよ」

それに、道乃漫との初めては、この地方都市のホテルでするわけにはいかない。