「彼女のことは気にしないで」柳田姉は道乃漫に言った。「私たちはもう彼女を相手にするのも面倒くさくなったわ。口論する気も起きないの」
道乃漫は笑いながら言った。「久しぶりに皆さんに会えて、本当に懐かしいです。今朝のコーヒーは私がおごります」
「ハハハ、遠慮なく頂くわ。あなたが将来大スターになったら、大スターにコーヒーをおごってもらったって自慢できるわね」と柳田姉は笑った。
高橋勉真も冗談を言って加わった。「道乃漫、後でサインをくれないか?写真も一緒に撮ろう。君が有名になったら、SNSにアップして自慢するよ」
「それなら私が有名になってからサインしましょう。芸能人のサインは普通のサインとは違いますからね」と道乃漫も冗談を言った。
皆はそれを聞いて、大笑いした。
その時、道乃漫はデリバリーの配達員から電話を受け、会社のフロントに到着したので取りに来るように言われた。
「私も一緒に行くわ」と柳田姉が言った。道乃漫が持ちきれないかもしれないと心配したからだ。
そこで、二人は一緒に下りて行った。
玄関で配達員からコーヒーを受け取ると、会社の入り口が騒がしくなっていた。
「どうしてこんなに人が多いの?」柳田姉は不思議そうに尋ねた。
若い女の子たちばかりで、学生らしい姿も見える。「今日は学校に行かないの?」
「大学生もいれば、授業をサボって来た子もいます」と近くにいた警備員が答えた。
彼は首を振りながら、「さっき彼女たちの話を聞いていたら、村上舟翔が来るらしいんです。今どきの若者は、アイドルを追いかけるのは構いませんが、学校をサボってまでするのはどうかと思います。親は苦労して子供に教育を受けさせているのに、どうして授業をサボるんでしょうか」
この中には授業のない大学生もいれば、授業をサボって来た学生もいた。さらにひどいことに、高校生までもが授業をサボって来ていた。
警備員も中年で、子供が学校に通っている。
彼の給料は多くないが、子供によい教育を受けさせようと努力している。
もし自分の子供もアイドルを追いかけて授業をサボったら?
警備員は他人事とは思えなかった。