道乃漫のこの口の達者さは、夏川清翔と道乃琪を人生をやり直したいと思うほど罵れる人物だけに、目の前の少女なんて相手にもならない。
少女は「あなた」と言いかけて、不服そうな表情を浮かべたものの、言葉が見つからず、先ほどの柳田姉と立場が逆転してしまった。
誰かが「舟翔が来た!」と悲鳴のような声を上げた。
「舟翔!舟翔!」
「舟翔、大好き!」
女の子たちは皆熱狂し、先ほどの少女も道乃漫のことは忘れ、村上舟翔に手を振った。
サングラスをかけたイケメンの若者が、ファンの悲鳴に対して、クールな表情で高慢な態度を見せていた。
傍らには四人の屈強なボディーガードがついており、ファンを脇へ押しのけ続けていた。
か細い少女たちは押されてよろめきながらも、なおも前に押し寄せ、「舟翔、私を見て、舟翔!」と叫んでいた。