道乃漫のこの口の達者さは、夏川清翔と道乃琪を人生をやり直したいと思うほど罵れる人物だけに、目の前の少女なんて相手にもならない。
少女は「あなた」と言いかけて、不服そうな表情を浮かべたものの、言葉が見つからず、先ほどの柳田姉と立場が逆転してしまった。
誰かが「舟翔が来た!」と悲鳴のような声を上げた。
「舟翔!舟翔!」
「舟翔、大好き!」
女の子たちは皆熱狂し、先ほどの少女も道乃漫のことは忘れ、村上舟翔に手を振った。
サングラスをかけたイケメンの若者が、ファンの悲鳴に対して、クールな表情で高慢な態度を見せていた。
傍らには四人の屈強なボディーガードがついており、ファンを脇へ押しのけ続けていた。
か細い少女たちは押されてよろめきながらも、なおも前に押し寄せ、「舟翔、私を見て、舟翔!」と叫んでいた。
「近づくな!」ボディーガードがファンに怒鳴り、先ほどの少女が村上舟翔に手を振ろうとしているのを見て、「パン」という音と共に彼女の腕を払いのけた。「近づくなと言っただろう!」
少女の腕は激しく痛み、分厚いコートを通してもその痛みで涙が溢れ出た。「私...私はただ手を振って、舟翔に見てもらいたかっただけ...」
「嘘をつくな、お前は彼に触ろうとしたんだ!」ボディーガードは自分が人を冤罪に陥れたことを認めようとしなかった。
「違います、ただ手を振っただけです。」少女は悔しそうに言った。
柳田姉は見かねて言った。「あまりにもひどすぎる。村上舟翔は見えていないの?」
周りの女の子たちは次々とその少女を非難し始めた。「ありえない、どうして舟翔に触ろうとするの!私たち小舟ファミリーにはあなたのようなファンは必要ない、出て行って!よく舟翔に触れようとしたわね!」
「彼女の顔を撮って、晒しものにしましょう。これからは舟翔のファン団体に近づかせないようにしましょう。」
少女は焦って泣き出した。「本当に違うんです...」
ボディーガードは得意げに笑った。
「こんな...こんな人のどこがファンになる価値があるの!ファンたちは何を考えているの!」柳田姉は怒りを露わにした。
「何だと!」ボディーガードの一人が耳が良く、柳田姉の言葉を聞きつけ、彼女を怒鳴りつけ、今にも殴りかかりそうな様子だった。