356 釣り合わない

こんな夜遅くまで外にいるの?

彼女は仕事で今まで外にいたのよ。

早く帰るよりも、道乃漫はお腹を空かせたまま夜遅くまで働く方がまだましだった。少なくとも道乃啓元と夏川清翔のあの吐き気がする顔を見なくて済むから。

高橋の叔母さんが道乃漫のために料理を作ってくれなかったので、道乃漫は自分で作るしかなく、そのおかげで料理の腕を磨くことができた。

実際、誰も生まれながらにして料理が上手なわけではない。みんな必要に迫られて身につけたものだ。

夏川清未は道乃漫の作った料理を食べていた。美味しかったけれど、なんだか複雑な気持ちになった。

だからこそ、道乃漫が引っ越してきてからは、夏川清未は道乃漫に家事をさせないようにしていた。

過去に道乃漫が受けた辛い思いは取り戻せない。だから今も、そしてこれからも、道乃漫には今まで経験できなかったことを全て経験させてあげたいと思っていた。