368 来ないって言ってたじゃない?

今度は道乃漫がマイクを受け取る番となり、これほど多くの人々の前で、彼女はきっと緊張するだろう。

深く息を吸って、「皆さん、こんにちは。私は道乃漫です」と言った。

思いがけないことに、以前の村上舟翔のおかげで、会場には道乃漫を知っている人もいた。

拍手の中に、「道乃漫!道乃漫!」という声が散発的に混ざっていた。

「彼女が道乃漫だ!」

「とても綺麗だね!」

「見た目からは、こんなに強いとは思えないね」

道乃漫:「……」

白泽霜乃の番になった時、応援に来た芸能人たちの形式的な拍手以外は、観客からのまばらな拍手で、その差は歴然としていた。

白泽霜乃の顔が曇った。

観客の中に隠れ、わざと前の方ではない席を4枚取った神崎大婆様は、白石诺乃に小声で言った:「やはり観客の目は確かね。みんな白泽霜乃が良い人間じゃないことを知っているわ」

神崎大爺様は大婆様の隣に座り、老眼鏡をかけたまま、不満げに言い続けた。「なんでこんな後ろの席を選んだんだ?道乃漫の顔がよく見えないじゃないか」

大爺様は双眼鏡を持ってこなかったことを後悔していた。

でも、本当に双眼鏡を持ってきていたら、きっと変人扱いされていただろう。

大婆様は口を尖らせて、「あなたは来ないって言ったでしょう?来ないと思って、群衆の中に隠れる席を二枚取ったのよ。誰があなたが気が変わって来るって思ったかしら?」

元々大婆様は白石诺乃と一緒に道乃漫の初上映を見に来るつもりだった。どう考えても、これは道乃漫の初めての映画出演なのだから、応援に来なければならないでしょう?

大婆様は相変わらず身分を隠す作戦を続けていた。結局のところ、多くの人が彼女を見たことがなくても、白石诺乃のことは知っているのだから。

道乃漫に本当の身分がばれないように、特に群衆の中に隠れることにした。

大婆様が大爺様に一言聞いてみた、来るかどうかを。

結果として大爺様は意地を張って、道乃漫にまったく興味がないと言い張った。

しかし二日も経たないうちに、白石诺乃の要請で神崎西紳も一緒に来ることを知ると、大爺様はついに我慢できなくなり、みんなが来るなら、仕方なく自分も来ようかと言い出した。