しかし、イヤホンからの催促に、司會者は逆らうことができず、ぎこちない笑顔を保ちながら「それでは、お話はこれくらいにして、映画をご覧いただきましょう!」と言った。
白泽霜乃は既に笑顔で立ち上がりかけていたが、半分立ち上がったところで、司會者が彼女を無視して映画を始めようとしているのを見た。
白泽霜乃は気まずく固まり、信じられない様子で司會者を見つめ、後に何か言葉があることを期待した。
しかし司會者は真っ直ぐ前を向いたまま降壇し、彼女の視線を全く受け取らなかった。
映画館の照明が全て消え、白泽霜乃は誰かに引っ張られ、仕方なく座り直した。
3Dメガネをかける時も、まだ納得がいかない様子だった。
なぜ道乃漫はあんなに長く壇上にいられたのに、自分の番になると壇上に上がれないのか!
白泽霜乃は耐えられないほど腹を立て、隣の道乃漫を険しい目つきで睨みつけた。
しかし今の道乃漫の注意は全く白泽霜乃に向いていなかった。彼女は司會者が白泽霜乃を壇上に上げなかった異常さに気付き、先ほど神崎卓礼が電話をしに出て行った場面を思い出していた。
神崎卓礼の影響かもしれない、あまりにもタイミングが良すぎるのだから。
映画が正式に始まり、道乃漫は心を整理して映画に集中した。
今日は完成した作品を見るのも初めてだった。高木武一が編集を終えた後は誰にも見せず、橘水東にさえ見せなかった。観客と一緒に見てこそ、最も本物の反応が得られると言っていた。
映画のリズムは見事に編集されており、確かに白泽霜乃のシーンが無くても何の影響もなく、むしろリズムがより明確になり、ストーリーがより合理的になっていた。
しかし隣の白泽霜乃の気分は、どんどん悪くなっていった。
彼女は最初、壇上に上がれなかったことについては、後でその司會者と清算すればいいと思っていた!
まずは映画を見て、自分の演技を確認しようと。
しかし30分待っても、自分の出番のはずの場面で、自分が出てこない。
白泽霜乃は、ここがカットされたのだろうと思った。
映画やドラマでシーンがカットされるのは普通のことだ。
しかし1時間待っても、まだ彼女は出てこず、元々あるはずのシーンも全て消えていた。
1時間半経っても、まだ出てこない。
最後に映画が終わり、エンドロールが流れても、俳優リストにさえ彼女の名前はなかった!