道乃琪は今でも日本映画大学で勉強しているのに、何を演じているのよ。彼女の妹の漫には及ばないわ!
道乃漫は勉強したことがないのに、こんなに上手く演じられる。道乃琪を百倍も上回っているわ!
人々が散り散りになった後、道乃漫はようやく夏川清未と一緒に離れた。
しかし、上映室の出口を出たところで、神崎卓礼に出会った。
彼は出口で背筋をピンと伸ばして立っており、彼女が出てくるとすぐに会えるようにしていた。
道乃漫は思わず彼の胸に飛び込みそうになったが、夏川清未がそばにいることを思い出し、何とか自制した。
しかし、それでも喜びを抑えきれなかった。
神崎卓礼は長い脚を一歩踏み出すと、すぐに彼女の前に立っていた。
「私、さっきステージの上にいた時からあなたを見つけていたの」道乃漫は今、手柄を自慢する子供のようで、まるで『私、一番最初にあなたを見つけたの。すごいでしょう?』と言っているようだった。
「知っているよ。君が見ているのを見ていたから」神崎卓礼は手を上げ、夏川清未の前で、道乃漫の髪を優しく撫でながら、夏川清未に挨拶をした。「お母さん」
夏川清未はこの「お母さん」という言葉に戸惑い、今でもまだ慣れていなかった。
「さっきは、おじいちゃんとおばあちゃん、それに両親も見に来ていたんだ。でも君を驚かせたくなかったから、先に帰ったよ。お正月に君を連れて帰ってくるように言われた」と神崎卓礼は言った。
大爺様がそう言ったということは、道乃漫のことを気に入っているということだ。
どうやら、道乃漫がステージ上で見せた凛とした対応が、大爺様の気性に合ったようだ。
「うん」道乃漫は素直に答えた。「いつ帰ってきたの?」
「今日だよ」
「まさか、飛行機を降りてすぐに来たの?」道乃漫は驚いた。
「君が初日の上映会に来てほしいって言ったじゃないか?」神崎卓礼は微笑んで、「だから必ず叶えようと思ったんだ」
「次からはそんなことしないでね。私はただ言っただけで、あなたにこんなに疲れて急いで帰ってきてほしいわけじゃないの」道乃漫は自責の念に駆られ、こんなことを言わなければよかったと思った。
「分かっているよ」神崎卓礼は言いながら、道乃漫と夏川清未を駐車場へと案内した。
「今回の商談は上手くいった?」車に乗り込んで、道乃漫は尋ねた。