483 加藤正柏がまっすぐ道乃漫に向かって歩いてきた

橘影乃は顔色を変えた。「だから、あの日神崎卓風があなたを探しに来たのは、あなたたち二人が恋愛関係にあるからじゃないの?」

道乃漫は冷ややかに嘲った。「あなたに何の関係があるの?」

橘影乃はかっとなった。道乃漫はいつも同じことしか言わないのか?

しかし、橘影乃は本当に反論する理由を言い出せなかった。

道乃漫の一言で完全に黙らされてしまった。

橘影乃は歯を食いしばり、反論しようとしたが、ちょうどそのとき梁川先生が入ってきた。「みんな静かに、席に戻りなさい。話があります。」

橘影乃は仕方なく道乃漫を睨みつけてから、不満そうに自分の席に戻った。

すべての学生が静かになったのを見て、梁川先生は話し始めた。「みなさん、こんにちは。私は梁と申します。梁川先生と呼んでください。私は大学4年生の演技クラスの担任で、今日からみなさんの1年生演技クラスの担任も兼任することになりました。以前の担任だった高橋先生は人事異動のため、もうみなさんの担任ではありません。」

予想通り、学生たちはざわめき始め、あれこれと議論し始めた。

どうして途中で突然担任が変わるのだろう?

前兆もなく、あまりにも突然すぎる!

「みなさん、静かに!」梁川先生は大声で言い、全員が静かになるまで待った。「私の研究室は以前の高橋先生の研究室と同じです。何かあれば直接私を訪ねてください。」

「これが私の電話番号です。」そう言って、彼女は黒板に自分の電話番号を書いた。「何か問題があれば電話をください。」

そのとき、水野先生が入ってきて、梁川先生は水野先生に挨拶をしてから退室した。

今日の授業が終わり、藤井纱媛は言った。「道乃漫、私たち三人で映画を見に行くんだけど、一緒にどう?」

「ごめん、明日出発しなきゃいけないから、今日は荷物をまとめないと。」道乃漫は説明した。

「あ、そうだったね。じゃあ誘うのはやめておくよ。帰ってきたらまた誘うね。」藤井纱媛は言った。

彼女たちが一緒に学校の外に向かっていると、向こうから一人の人物が歩いてきた。

道乃漫はそれを見て眉をひそめた。

来た人物は加藤正柏だった。

入学してから今まで、彼女はずっと加藤正柏に会っていなかったため、加藤正柏がここの映画監督専攻の修士1年生であることをすっかり忘れていた。