504 顔面虐殺

橘影乃の顔に張り付いた笑顔が一気に崩れた。ふふっ……ふふっ、くそったれのふふっ！

道乃漫は彼女が映画を撮る資格がないと嘲笑っているのだ！

橘影乃は怒りで胸が痛くなった。そのとき道乃漫がまた言った。「あなたがもし将来映画を撮る機会があれば、分からないことがあったら、いつでも私に聞いてね」

もし機会があれば……

つまり、一生撮れないかもしれないということだ。

道乃漫の言葉の意味を、橘影乃ははっきりと理解した。

「道乃漫、調子に乗るな！」橘影乃は顔を青ざめさせて言った。「映画を撮るにもレベルがあるのよ。話題作りや肌の露出で売る映画も映画だけど、それじゃ表舞台には立てないわ。あなたがどれほどすごい映画を撮れるか、見ものね！」

言い終わると、橘影乃は怒りに任せて立ち去った。

道乃漫が教室に戻ると、席に着くやいなや、藤井纱媛たち三人から熱烈な歓迎を受けた。

藤井纱媛は、道乃琪がネットで騒ぎを起こし、道乃漫が休んだのは映画撮影のためだということがクラス中に知れ渡ったことを道乃漫に伝えた。「残念ながらあなたはその場にいなかったけど、橘影乃の表情は本当に見ものだったわ」

「そういえば、道乃漫、知ってる？加藤正柏が元々約束されていた監督の仕事を、また取り消されたらしいよ」と伴田雪子が言った。

「え？」道乃漫は加藤正柏のことにはあまり関心がなかった。

「『恋愛攻略』っていう恋愛ドラマよ。加藤正柏は小さなウェブドラマを撮ったことはあるけど、それも全部家族のお金で投資したものだし、これが初めてまともな投資家から監督を任されたのに、先日『恋愛攻略』の撮影が始まって、ネットでも宣伝されたけど、監督は加藤正柏じゃなかったの」

道乃漫は思い出した。前世では加藤正柏はある恋愛ドラマで名を上げ、その後映画監督になり、自ら監督・出演もして、どの作品も興行収入が良く、かなりの成果を上げていた。

時期から考えると、おそらくこの『恋愛攻略』だろう。加藤正柏のキャリアの出発点はここから始まるはずだった。

しかし今はこのチャンスを失い、前世とはかなり違ってきている。

加藤正柏がまだ前世のような成功を収められるかどうかは分からない。

「彼が降ろされたのはいつの話？」道乃漫はもう一言尋ねた。