「何が悪いことがあるの?」神崎卓礼が言い終わると、実家から電話がかかってきた。
「おばあちゃん」神崎卓礼は呼びかけた。
老婦人が電話の向こうで何を言ったのかは分からないが、神崎卓礼は笑い出した。「はい、僕もちょうどそのことを話していたところです。まさかおばあちゃんと同じことを考えていたなんて。わかりました、道乃漫に伝えておきます」
電話を切ると、神崎卓礼は言った。「偶然だね、おばあちゃんも同じことを考えていたよ。さっきおばあちゃんから電話があって、僕にもお母さんを連れて、みんなで一緒に映画を見に行こうって。人が多い方が賑やかだからって。どうせ君たちも今日見るつもりだったんでしょ」
大婆様がそう言うのなら、道乃漫はあっさりと承諾した。
神崎卓礼と道乃漫はまず夏川清未を迎えに行った。神崎家の人たちと一緒に映画を見に行くと聞いて、夏川清未は緊張して言った。「一緒に?これが私たちの初めての正式な顔合わせになるのかしら。あなたったら、どうして早く言ってくれなかったの?突然帰ってきてこんなことを言って、すぐに出かけるなんて、私は何の準備もしていないわ」
「準備は必要ありません。ただの普通の集まりですから。もし母さんが大げさに準備したら、祖父母に怒られてしまいますよ」神崎卓礼は笑いながら慰めた。
「この前、おばあちゃんと伯母さんが私たちの家に来たじゃない?もう会ったことがあるから、緊張することないわ」道乃漫は夏川清未の腕を取りながら言った。「前回はとても良い会話ができたでしょう?お母さん、普通の気持ちで、友達同士の集まりだと思えばいいのよ」
夏川清未はため息をつき、軽く道乃漫の鼻先を指で触れた。「私はただどこか不適切なことをして、あなたに恥をかかせるんじゃないかと心配しているのよ」
前回は大婆様と白石诺乃にしか会っていなかった。
しかし今回は、神崎家の大家長である神崎大爺様も含まれていた。
たとえ道乃漫と神崎卓礼の関係がなくても、神崎大爺様に会うのは緊張することだった。
結局、彼は普通のお年寄りではなく、戦時中に国を支援し、そして勇敢に身を引いた後も、神崎家を安定させ続けた人物だった。
大爺様の数々の経験は、誰もが非常に敬服するものだった。