522 ちょっとロマンチック

時間が遅すぎて、大爺様と大婆様だけでなく、夏川清未もこんなに長く起きていられなかった。

そのため、道乃漫は明日の昼間に夏川清未をもう一度映画に連れて行くつもりだった。

二人が映画館に着いたとき、上映開始まであと20分あり、上映室は10分前から入場可能で、時間には余裕があった。

道乃漫はバッグからキャップを取り出して被った。

彼女は今のところ誰もが知るほど有名ではないが、どう言っても彼女はこの映画の主演であり、最近ネット上で話題になっていて、多くの人がほぼ毎日彼女の写真を見ていた。

さらに、映画を見終わった観客は2時間以上道乃漫を見ることになるので、彼女の顔を覚えてしまうだろう。

そのため、道乃漫は帽子で顔を隠すことにした。幸い上映室の中は暗いので、帽子を取っても目立たないだろう。

「チケットを予約した人がこんなに多いの?」ショッピングモールの最上階にある映画館に着くと、自動発券機の前に並ぶ人々を見て、道乃漫は驚いて口を開けた。

ネット上では多くのユーザーが初日の上映のチケットを買ったと言っていたが、ネットユーザーは全国各地に散らばっているので、初日の上映にこれほど多くの人が来るとは思っていなかった。満席になりそうだ。

「宣伝効果が確かに出ているようだね」神崎卓礼は笑いながら言った。

「この中にどれだけ『爭雄』の観客がいるのかしら」と道乃漫は言った。

彼らが来たのは神崎創映シネマで、初日の上映のほとんどは『赤虎』に割り当てられ、『爭雄』には2回分だけだった。

二つの映画が同時に公開されるため、初日の上映を見たい観客はどちらか一方を選ばなければならなかった。

二人は自動発券機の列に並んでチケットを受け取り、ちょうど入場時間になった。

入場すると、大スクリーンでは広告が流れており、道乃漫と神崎卓礼は自分たちの席を見つけて座った。

神崎卓礼は隣の人の緊張を感じ取り、振り向いて尋ねた。「どうした?緊張してる?」

道乃漫はうなずき、小声で言った。「撮影が終わっても完成した映画を見ていないの。これが初めてだから、自分の演技がどうか分からなくて」

興行成績については心配していなかった。映画の質と俳優の演技が良ければ、興行成績は自然と心配する必要はない。