第101章 もう騙せない

「どういう意味?」

「お母さん、今の社会のことがよく分からないかもしれないけど、今の社会は昔とは違うわ。でも、変わっていないところもあるの。お母さん、考えてみて。当時、どうやって仕事を得たの?」

「木下おじいさんのおかげよ」伊藤佳代が身寄りのない橋本東祐と結婚できたのは、木下おじいさんの力が大きかった。

橋本東祐が木下おじいさんと少し関係があることを知っていたので、橋本東祐がその関係を維持さえすれば、木下おじいさんのコネを使って、彼らの暮らしは他人より悪くなることはないはずだった。

「そうなのよ。今は勉強ができるだけじゃダメだって聞いたわ。頼れる人が必要なの。実は考えたんだけど、私が本当に大学に行くとしたら、家にたくさんのお金がかかるでしょう。お母さん、あなたにそんなに苦労させたくないの。だから普段稼いだお金も、あまり節約しないで。使うべきところは使って」

伊藤佳代は急に緊張した:「絵里子、それはどういう意味?あなた、勉強をやめるつもり?」

「違うわ、お母さん焦らないで、私の話を聞いて。勉強は続けるわ、高校だけじゃなくて大学も。でも計画を少し変えないといけないの。高校三年生の後期は学校をやめて、もちろん大学入試も受けないで、直接仕事を見つけて、しっかり稼いで、それから夜間学校に通って、学歴を上げていくつもりよ。お母さん安心して、必ず期待に応えるから」

伊藤佳代の手を取りながら、橋本絵里子は上手く言葉を紡いだ。

「どうして?」伊藤佳代は同意しなかった:「そんな学校は、東京大学や東大に比べられないわ。お金のことなら心配しないで、お父さんは口は硬いけど心は優しいのよ。それに、私とお父さんの約束は高校の三年間だけだったの。あなたが本当に東大や東京大学に合格できたら、お父さんは鍋を売ってでも、きっと勉強を続けさせてくれるわ」

「お母さん、それは関係ないの」橋本絵里子は珍しく辛抱強く伊藤佳代に説明した:「私はお母さんとお父さんのことが心配なの。最近お母さんがよく夜更かしするのを見て、辛くて。それに言ったでしょう、今の社会は違うの。成績がどんなに良くても、卒業しても良い仕事があるとは限らないわ。最初は自分の計画を実行するのが少し面倒かなと思ってたけど、今は木下家と白洲家があるから、私の仕事はすぐに決まるでしょう?」