第101章 もう騙せない

「どういう意味?」

「お母さん、今の社会のことがよく分からないかもしれないけど、今の社会は昔とは違うわ。でも、変わっていないところもあるの。お母さん、考えてみて。当時、どうやって仕事を得たの?」

「木下おじいさんのおかげよ」伊藤佳代が身寄りのない橋本東祐と結婚できたのは、木下おじいさんの力が大きかった。

橋本東祐が木下おじいさんと少し関係があることを知っていたので、橋本東祐がその関係を維持さえすれば、木下おじいさんのコネを使って、彼らの暮らしは他人より悪くなることはないはずだった。

「そうなのよ。今は勉強ができるだけじゃダメだって聞いたわ。頼れる人が必要なの。実は考えたんだけど、私が本当に大学に行くとしたら、家にたくさんのお金がかかるでしょう。お母さん、あなたにそんなに苦労させたくないの。だから普段稼いだお金も、あまり節約しないで。使うべきところは使って」