斎藤昇は表情を引き締め、手を合わせて膝の上に置き、真面目な様子で橋本奈奈を見つめた。「自分の家で本を読むのに、何か変なことでもあるのか?」
「いいえ、全然!」橋本奈奈は兵士のように直立不動の姿勢を取り、何度も首を振った。彼女は斎藤家の人間ではないのに斎藤家の物置に入れるのだから、斎藤お兄さんならなおさらだ。
でも、どこか少し変な感じがするのは気のせいだろうか?
一瞬頭が真っ白になった橋本奈奈は、斎藤昇の威圧感に圧倒され、頭が働かないどころか、反応も鈍くなってしまい、普段の機転の利く落ち着いた様子は微塵も見られなかった。
「問題ないなら、こっちに来て本を読もう」斎藤昇は自分の隣の椅子を少し引いて、橋本奈奈に座るよう促した。
斎藤昇の注目を浴びて、橋本奈奈はとても緊張していた。体が硬直しているだけでなく、歩く時も手足が同時に動く不自然な状態だった。