第103章 気まずい

橋本奈奈が気づいた時には、既に足が痺れていた。

斎藤昇の前で、橋本奈奈は何故か足の痺れを見せることができず、冷静を装って一歩一歩斎藤家を後にした。斎藤家の門を出た瞬間、橋本奈奈はしびれた足を壁に寄りかかり、無言で叫んだ。

家に帰るまでの道のり、橋本奈奈の足は完全には回復していなかった。

「奈奈、勉強は大切だけど、体も大事にしないとね。ずっと座っているのは体に良くないから、30分勉強したら立って少し動くようにしなさい。次からはこんなことしちゃダメよ、分かった?」

「お父さん、安心して。次からは絶対にこんなことしません。」

今回は斎藤お兄さんが椅子を引いてくれたから、その思いがけない親切に驚いて、つい座り込んでしまったのだ。

次からは分かっているはず。座る前に椅子をもう少し引き出せば、何の問題もないのだから。

「よし、自分の言葉を忘れないように。いや、明日から起きたら勉強の前に中庭を二周走ることにしよう。体力が弱いと、試験で頭がぼーっとしてしまうからな。」橋本東祐は既に橋本奈奈に半年後の中学校入試の準備をさせ始めていた。

半年と言っても、実際にはあと数ヶ月しかない。

「お父さん、安心して。そういう面は常に気をつけているから、そんな小さなミスで失敗することはありません。」橋本奈奈は橋本東祐の珍しい心配に笑顔で応えた。

「ふん。」橋本東祐と橋本奈奈が玄関で仲睦まじく、良い父親と良い娘の親子円満な様子を見て、伊藤佳代は気分が悪くなった。

「お母さん、放っておきましょう。」今、橋本絵里子は橋本奈奈を利用して、木下家と白洲家との関係を築き、早めに立派な仕事を得ようと目論んでいた。そのため、最近は特に慎重になり、橋本奈奈に嫌がらせをするどころか、伊藤佳代にも態度を改めるよう諭し、橋本奈奈に対して眉をひそめたり鼻で笑ったりするのを控えるよう言っていた。

橋本絵里子にそう諭されて、伊藤佳代は心の中でどれほど腹が立っても、騒ぎ立てることができず、大晦日の準備に取り掛かるしかなかった。

食卓では、橋本東祐は橋本奈奈におかずを次々と取り分けた。「奈奈、たくさん食べなさい。栄養をつけて、体を整えることが大切だ。忘れないでおきなさい、体が革命の本钱なんだから。」

橋本東祐は半年前、橋本奈奈を病院に連れて行った時の医者の言葉を忘れていなかった。