「ぶつかって痛かった?」抱きしめているお嬢ちゃんの目が赤くなっているのを見て、斎藤昇は状況を理解し、橋本奈奈の鼻を揉もうと手を伸ばした。
「やめて、やめて!」斎藤昇が揉まなければいいのに、揉むと橋本奈奈はしびれるような痛みを感じ、とても辛かった。
斎藤昇に好き勝手されないように、橋本奈奈は珍しく勇気を出して、斎藤昇の手をぎゅっと掴んで、動かせないようにした。
斎藤昇は自分の手を掴んでいる小さな手が、骨がないかのように柔らかいのを感じ、心の中に何か動くものを感じた。しかし、その感情が何を意味するのか、恋愛に関してまだ無知な斎藤昇にはよく分からなかった。
物事が自分の制御を超えることを好まない斎藤昇は、心の中の奇妙な感覚を抑え、冷静に手を引き抜いた。「入ってきた時、何か持っていたよね?」