第098章 ご褒美

「ぶつかって痛かった?」抱きしめているお嬢ちゃんの目が赤くなっているのを見て、斎藤昇は状況を理解し、橋本奈奈の鼻を揉もうと手を伸ばした。

「やめて、やめて!」斎藤昇が揉まなければいいのに、揉むと橋本奈奈はしびれるような痛みを感じ、とても辛かった。

斎藤昇に好き勝手されないように、橋本奈奈は珍しく勇気を出して、斎藤昇の手をぎゅっと掴んで、動かせないようにした。

斎藤昇は自分の手を掴んでいる小さな手が、骨がないかのように柔らかいのを感じ、心の中に何か動くものを感じた。しかし、その感情が何を意味するのか、恋愛に関してまだ無知な斎藤昇にはよく分からなかった。

物事が自分の制御を超えることを好まない斎藤昇は、心の中の奇妙な感覚を抑え、冷静に手を引き抜いた。「入ってきた時、何か持っていたよね?」

「賞状です」橋本奈奈は目を輝かせ、宝物を見せるように自分の賞状を斎藤昇に渡すだけでなく、成績表も取り出した。「斎藤お兄さん、見てください。これは期末試験の成績です。そうそう、斎藤お兄さんがペンを貸してくれた時の作文コンテストで、私は一位を取りました。高校入試で加点されるって聞きましたが、何点加点されるかわかりません」

「よくやった」斎藤昇は橋本奈奈の持ち物を一つ一つ見て、目に賞賛の光が浮かんだ。

「斎藤お兄さん、ペンをお返しします」橋本奈奈は元々ペンを物置に置いておき、斎藤昇が戻ってきた時に見つけて取りに来てもらおうと思っていた。

しかし数日経っても、そのペンがまだそこにあるのを見て、以前白洲隆から聞いた話では、このペンはかなり高価なものだと聞いていたので、ここが斎藤家であっても、橋本奈奈はペンを無くしてしまうのが怖くて、再び自分で持ち歩くことにした。

このペンは斎藤昇にとって特別な意味があり、斎藤昇も当然取り戻すつもりだった。

あの日は急いで来て急いで帰り、斎藤昇はペンを橋本奈奈に貸した後、すぐに学校を離れ、斎藤家に戻って服を着替えてすぐに部隊に戻った。

幸い、みんな同じ敷地内に住んでいて、橋本奈奈も本を斎藤家に置いていたので、斎藤昇はペンが戻ってこないことを全く心配していなかった。