第136章 老牛が若草を食べたがる

「本当?」橋本奈奈は目を輝かせた。「今すぐ手伝ってくれる?...待って、あなたそんなに優しいの?」大野宏は善人とは程遠い人物だった。

「信じるも信じないもお前の勝手だ。結局、俺に連絡を取ってもらいたいのか?」大野宏は鼻を鳴らした。

「お願い!」橋本奈奈は眉をひそめた。「いつ答えをもらえるの?」

「待っていろよ。今すぐ白洲隆に連絡が取れたとしても、白洲隆からお前に連絡が来るまでには時間がかかるだろう。家で待っていろ。」

「...」橋本奈奈は拳を握りしめた。「私をからかっているんでしょう?」

「好きにしろ。」そう言い捨てて、大野宏はそのまま立ち去った。

少し離れたところまで来ると、大野宏は橋本奈奈を振り返って見た。「ふん、なんだあいつは。ゆっくり待っていろよ、焦らせてやる!」

大野宏は確かに橋本奈奈をからかっていた。彼女が焦っているのを見て、わざとそう言って引き延ばしているだけだった。橋本奈奈に何もできないとしても、少しでも嫌な思いをさせられれば良かった。以前、彼女に不快な思いをさせられたのだから。

大野宏は気分が良かったが、橋本奈奈は絶望寸前だった。

大野宏が去った後、彼女は大野宏が白洲隆に連絡してくれるとは到底思えなかった。今追いかけて白洲隆の連絡先を聞いたとしても、きっと教えてくれないだろう。

木下家には誰もおらず、白洲隆も家にいない。橋本家は親戚付き合いも絶えている。あんな大金を誰に借りればいいのか。お父さんを見捨てて、死なせるわけにはいかない。

一瞬にして取り乱した橋本奈奈は、涙を雨のように流し、とても悲しそうに泣いた。

その時、部隊では、新兵の訓練を終えて事務所で休憩しようとした斎藤昇が座ったばかりで、温かい白湯を一口も飲めないうちに、事務所の電話が鳴った。

斎藤昇は水を飲みながら電話に出た。低く厚みのある声で「はい」と答えた。

「...」

電話の向こう側からは声が聞こえず、斎藤昇が聞き取れる呼吸も抑えられていた。すすり泣きの声を聞いてから、斎藤昇は試すように尋ねた。「橋本奈奈?」

「斎藤お兄さん...」そう呼びかけた途端、橋本奈奈の感情は崩壊した。

「まず泣くのを止めて、どうしたんだ?」斎藤昇はコップを置き、姿勢を正した。