第142章 長い付き合いで人の本心が分かる

橋本絵里子は面白がって、伊藤佳代の前で橋本奈奈の悪口を言った。

「もういい、その話はやめて。思い出すだけで腹が立つわ。早く病院に行きましょう。お父さんが目を覚ました時に、奈奈だけがそばにいるなんてことになったら大変よ。そうなったら、あなたの将来のことは諦めなさい。お父さんは絶対に奈奈贔屓になるわ」

「そうね、お母さん、走っていきましょう」家にはお金がないので、二人は病院まで交通手段を使う余裕もなく、歩いて行くしかなかった。

母娘が息を切らしながら病院に着いたのは、朝の8時だった。

伊藤佳代は病院に着くなり、まず橋本奈奈に尋ねた。「お父さんは目を覚ましたの?」

「まだです」

「ふう、よかった」伊藤佳代はほっと胸をなでおろした。橋本さんがまだ目覚めていないなら、絵里子にはまだチャンスがある。