第169章 メイドと間違えられた

橋本奈奈のその笑みは、まさに言葉以上の意味を持っていた。林康弘に彼が信頼できない人物だと明確に伝えるよりも、彼の面目を失わせ、より困惑させることになった。

林康弘は表情を引き締めたが、心中では相当な不快感を覚えていた。今日どうして一人の若い娘の前で恥をかいてしまったのだろうか?

「行くのか行かないのか?!」負けを認めたくない林康弘は胸を張り、橋本奈奈を置き去りにして家の中へと入っていった。

本来なら橋本奈奈は、この信頼できない老人と一緒に家に入りたくなかったのだが、斎藤お兄さんの頼みを思い出すと、汗まみれの姿で斎藤お兄さんが会わせたい人に会うのは失礼ではないだろうかと考えた。

仕方なく、橋本奈奈は林康弘の後を追って、大きな家の中に入った。

外観も美しかったが、内装はさらに見事だった。床には寄木細工のタイルが敷き詰められ、その模様は壮大で生き生きとしていた。天井からぶら下がっているクリスタルのシャンデリアは、雪の結晶のような形をしており、きらきらと輝いて非常に美しかった。