「なんと六千円も!!」伊藤佳代が封筒の中の千円札を一枚一枚数えて六千円になったとき、目を輝かせ、喜びと怒りが入り混じった様子で言った。「奈奈はまだ子供なのに、お金を隠すなんて、本当に目に余る。橋本さんが奈奈を甘やかしているからこそ、このお金だけでも、あの子を懲らしめてやりたいところよ。まだ若いくせに、こんなに私欲が強いなんて、全く橋本家の人間として考えていないわ、ずるがしこいったらありゃしない!」
意外だわ、あの子にはそんな手があったなんて。前に橋本さんの医療費を借りてきただけでなく、今度は六千円も持って帰ってきたなんて。
このままじゃダメだわ、奈奈にもっとお金を稼がせないと。そうすれば、絵里子が大学に行っても心配することはないわ。
前から言っているように、あの子があんなに勉強したって意味ないのよ。さっさと社会に出て働いて、お金を稼いだ方が、この家の暮らしが楽になるのに。でも橋本さんは私の言うことを聞かないんだから。
奈奈は勉強したいんでしょ?いいわ、この夏休みはまだ三分の一残ってる。
残りの期間で一万円稼いで、それに橋本さんの医療費も少しずつ返済できたら、勉強を続けさせてあげるわ。
そうでなければ、二度と学校には行かせないわよ。あの子は何の役にも立たない、ただ飯を食うだけなんだから!
「この六千円があれば、絵里子の学費は心配ないわ。絵里子のクラスメートは、みんな裕福な家庭の子供たちだって聞いたわ。急いで絵里子に服を買ってあげないと。新しい服がないと、クラスメートの前で恥ずかしい思いをさせてしまうわ。」
そう言うと、伊藤佳代は嬉しそうに橋本絵里子の新しい服を買いに出かけた。
前に休暇を十分取っていた伊藤佳代は、今日は珍しく2時間早く退勤できた。
伊藤佳代は橋本絵里子のために選んだばかりの新しい服を手に提げ、小さな歌を口ずさみながら、ゆっくりと家路についた。
しかし、家の近くまで来たとき、伊藤佳代は足を止め、表情を引き締め、さらに服の袋をまとめて一つにした。
それらをすべて終えてから、伊藤佳代はようやく安心して帰宅した。「えっ?」