「!」橋本絵里子は目を見開いた。彼女は橋本奈奈のお金がアルバイトで稼いだものだとは思っていなかった。最も重要なのは、このお金が不正なものではなく、橋本東祐がずっと知っていたということだった。
橋本東祐は目を閉じ、深く息を吸い、そして暗い目で橋本絵里子を見つめた。「だから今日突然、私の面倒を見たいと思って、外に連れ出してリハビリをしようとしたのか?」
「違います、お父さん...」
橋本絵里子が言い終わる前に、橋本東祐は冷たく言った。「奈奈、警察に通報しなさい。」
「お父さん、奈奈は狂ってるの?お父さんまで狂ったの?警察なんて簡単に呼べるものじゃないわ。それに、たいした金額じゃないでしょう。」絶対に橋本奈奈を警察に通報させてはいけない。
「私から盗まれた金額は少なくない。既に立件基準に達しているはずだ。お父さん、今すぐ警察に通報します。」
「だめ、だめ、警察はだめ、奈奈、警察に通報しないで!」顔面蒼白の橋本絵里子は母鶏のように、両手を広げ、ドア枠にしがみついて、ドアを完全に塞いだ。「奈奈、警察に通報しちゃだめ、本当にだめなの。お金は盗まれてないの、お母さんが、お母さんが持って行ったの。奈奈はまだ小さいから、そんなにたくさんのお金を持っているのは危ないでしょう。お母さんは預かっているだけよ。私たちは家族なんだから、警察なんて呼んじゃだめ!」
まだ18歳の橋本絵里子はついに耐えきれず、警察という言葉を聞いただけで、橋本東祐と橋本奈奈に追及される前に自分から認めてしまった。
「絵里子、お前は間違っているはずだ。この世に娘のお金を取る母親なんているものか。きっと家に泥棒が入ったんだ。お前の母親が取ったわけじゃない。奈奈、警察に通報しなさい。」橋本東祐は歯を食いしばった。今回は伊藤佳代に教訓を与えなければ、この女は本当に手に負えなくなる。
昨日、二人の娘の前で伊藤佳代を十分に叱ることができず、病院での出来事や戦友からお金を借りた古い借金の清算もできなかったが、それでも伊藤佳代は数日は大人しくしているはずだと思っていた。
しかし、たった一晩で、伊藤佳代は厚かましくも子供のお金を盗み、しかも絵里子と共謀して、彼を外に連れ出して奈奈を騙したのだ。