「おい、何者だ?正門の真ん中に立ちはだかって、しかも耳が遠いのか?」
「耳が遠いのはあんたの方だ!」間違いなく聞き間違えではないと確信した井上雨子は怒って振り向いた。「手塚昭、なんで平泉高校にいるの?付属高校に行くはずじゃなかったの?」
彼女の記憶では、手塚昭は前回の高校入試でかなりいい成績を取って、付属高校に行けるはずだった。
「俺がどこで勉強するかは俺の自由だ。平泉高校はいい学校だと思ったから来たんだ。お前に関係ないだろ」手塚昭も怒って言い返した。「それより、お前の家は金持ちなんだろ?なんで親に金を出してもらって付属高校に行かなかったんだ?」
井上雨子とは3年間同じクラスで、3年間隣の席だった。
高校に入ったら彼女と同級生にならなくて済むと思っていたのに、まさか井上雨子も平泉高校に来るとは。頭がおかしくなったのか?
「……」井上雨子は顔を青ざめさせ、手塚昭に文句を言おうとした。
井上雨子の当初の計画では、自分の実力で付属高校に合格できれば一番良かった。それができなくても、家族と相談して、お金を払ってでも平泉で一番いい高校である付属高校に行くつもりだった。
付属高校に中学部がなかったから、平泉中学校で中学を卒業することになったのだ。
しかし、付属高校に橋本奈奈がいると思うと、付属高校がどんなに良い学校でも、平泉一の高校どころか、全国一の高校だとしても、お金を払わなくていい、むしろ学校からお金をもらえるとしても、井上雨子は付属高校に行きたくなかった。
もう橋本奈奈に会いたくない。また3年間彼女に負けたくない!
つまり、井上雨子は橋本奈奈に会うのが怖くなり、彼女を避けるために、第二の選択肢として平泉高校を選び、理想の付属高校を諦めたのだ。
人の顔に傷をつけてはいけない、人の短所を暴いてはいけないと言うが。
手塚昭のこの言葉は、井上雨子の二つのタブーを直接犯してしまった。
もし井上雨子が女子生徒でなく、手塚昭が男子生徒でなければ、本当に殴り合いの喧嘩をしたかった。
中学の頃から、この手塚昭には紳士的な態度が全くなく、いつも彼女を怒らせ、彼女を憎らしく思わせた。彼女は手塚昭が将来彼女を見つけられず、結婚できないように呪った!
「どけ!」後ろから大叔父さんのような人物が現れ、威厳のある声で叫ぶと、井上雨子と手塚昭は無意識に両側に避けた。