橋本奈奈がこの場所をこんなにも隠しているということは、この場所に何か秘密があるに違いないと彼女は確信していた。
「絵里子、一体何をしようとしているの?」伊藤佳代は橋本絵里子を理解できない様子で見つめた。「この場所を知って、どうするつもり?橋本奈奈のあの子は去年から本当に厄介になってきているわ。余計なことはしない方がいいわ。いつも奈奈に勝てないばかりか、私たちが損をすることになるのよ。」
橋本絵里子は怖がらなかったが、伊藤佳代は少し怖くなっていた。
彼女は橋本東祐と結婚して何年も経つが、口論がなかったわけではないものの、先日のようなことは一度もなかった。目が赤くなるほど喧嘩をし、橋本東祐は彼女を平手打ちまでした。
何か気に入らないことがあると妻を殴って憂さ晴らしをする他の男たちと比べると、橋本東祐はずっと良い夫だった。
今回も伊藤佳代が橋本東祐を追い詰めなければ、彼は彼女の髪の毛一本も触れなかっただろう。
だからこそ、伊藤佳代は怖くなったのだ。
今まで女性を殴ったことのない男が突然手を上げた。伊藤佳代は今でもあの平手打ちの感触を忘れられない。
「あと半月一緒に頑張って、毎日手作り品を作れば、あなたの学費は何とかなるわ。余計なことはしないで。絵里子、ママの言うことを聞きなさい。ママは嘘なんかつかないわ。」橋本絵里子の頭を撫でながら、伊藤佳代は今回本当に橋本奈奈に対して策を講じたくなかった。
母娘二人で解決できることなのに、なぜわざわざ橋本奈奈を巻き込んで、単純な状況を複雑にする必要があるのか。意味がない、自分で面倒を招くだけだ。
そう言うと、橋本絵里子の反応も待たずに、伊藤佳代は夕食の準備に向かった。
「ふん!」伊藤佳代が去るのを見て、橋本絵里子は怒って足を踏み鳴らした。今まで母は自分の味方だったのに、今日はどうしたというのだろう。
あの平手打ちを受けたのは橋本絵里子ではなかったため、橋本東祐のあの一撃が伊藤佳代にとってどれほどの衝撃だったのか、彼女には全く分からなかった。
しかし、橋本絵里子は簡単には諦めない性格だった。他のことは自信がなくても、伊藤佳代を説得することは彼女の唯一の得意分野だった。今日がダメなら明日だ。必ず母を説得できる機会を見つけられるはずだ。