「本当に変わったのなら、奈奈も心を開いて、あなたと仲良くできるわよ」
橋本東祐は、奈奈との約束通り、彼女と橋本絵里子の関係に口を出さないことを守るつもりだと表明した。
橋本絵里子は形だけの礼儀を示しただけだったのに、橋本東祐が彼女の言葉を真に受けて、まるで彼女が何か間違いを犯して奈奈の許しを得なければならないかのような態度を取ったことに、思わず自分の唾で咽てしまうほど腹が立った。
橋本絵里子は歯を見せて笑った。「お父さん、その通りよ。私が本当に改心する気持ちがあれば、奈奈は私と仲直りしてくれるわ」
父親が奈奈の勉強場所を教えてくれないなら、自分で探すしかない。
彼女はこんな理不尽を信じられなかった。まさか奈奈に永遠に勝てないなんてことはないはず!
奈奈の勉強場所を見つけたら、奈奈のお金を全部取り上げるだけでなく、本も全部燃やしてやる。そうしたら、奈奈は誰に助けを求められるというの!
おかゆを一気に飲み干した後、橋本絵里子は平然と手芸の作業を始めた。
一人が会計作業をし、もう一人が静かに手芸をする。珍しいことに、橋本絵里子と橋本東祐は穏やかに過ごしており、とても和やかな雰囲気だった。
奈奈が斎藤家から帰ってきたとき、そんな光景を目にした。「お父さん、お姉ちゃん、ただいま」奈奈は本を置いて、自分の分の水を注いだ。
斎藤昇が家にいなかったので、奈奈は斎藤家を自由に歩き回ることはできず、食べ物も飲み物も全部持参していった。一日中水筒一本だけだったので、奈奈はとても喉が渇いていた。
奈奈が本を置くや否や、橋本絵里子は橋本東祐の様子をこっそり窺い、奈奈がすぐには戻って来ないことを確認すると、急いで立ち上がって奈奈が持ち帰った本を見に行った。
橋本絵里子が奈奈の持ち帰った本が高校二年生の、自分が新学期から学ぶはずの教科書だと分かった時、顔が糞よりも臭そうな表情になった。
奈奈はただ見せびらかしているだけだ。高校に入ったばかりの奈奈が、本当に独学で高校一年の内容を全部マスターして、もう高校二年の内容を学んでいるなんて信じられない。きっと自分がどれだけ勤勉で賢いかを見せつけるための見せかけに過ぎない。偽物!
お父さんだけが奈奈の手のひらで踊らされて、奈奈の臭い足を持ち上げて「素晴らしい」と言っているだけだ。