夫婦は同じ林の鳥だと言われるが、いざ困難に直面すると、それぞれ逃げ出すものだ。
彼は交通事故に遭い、ひき逃げされた後、病院に運ばれ、手術のために大金が必要だった。田中さんはその時彼を見捨てはしなかったが、その時の行動は見捨てるのと何が違うのか、同じように心が冷めないだろうか?
手術室に運ばれる時、お金がないという理由で、妻が地面に座って泣きながら太ももを叩くだけだったことを思い出すと、橋本東祐は心が冷え切るような思いがした。
伊藤佳代のそのような行動は、去って行くのと何が違うというのか?
いや、違いはある。
もし伊藤佳代が絵里子を連れて去っていれば、少なくとも彼がどのように死んでいくか病院で見なくて済んだはずだ。でもあの日、伊藤佳代は病院に残って泣き叫ぶだけで、少なくとも彼が死ぬところを見ることができた。