第181章 他人の人生を背負わない

「お父さん、私にはできるし、お父さんにもできると信じています。お母さんと一緒にいる日々が良いのか、それとも一人でいる方が楽しいのか、それはお父さん次第です。お父さん、私と姉さんはお父さんとお母さんの代わりに生きることはできないし、お父さんたちも私たち二人のために永遠に生きることはできません。私たちは大きくなって、小鳥のように、いつかは飛び立って、自分の家庭を持つんです。人生は短いから、責任を持つ前提で、自分がより自由に生きられる方法を選んでもいいんです。」

彼女は両親を縛る紐になりたくなかったし、両親に縛られたくもなかった。

この人生で、彼女は自分のために生きたいし、父親もそうすべきだと思っていた。

「考えてみるよ、もう少しよく考えさせてくれ。」橋本奈奈が冷静で、個人的な感情を交えずに説得すればするほど、橋本東祐は心の中で迷いが深まり、自分が何を望んでいるのか分からなくなっていた。

「お父さん、この件は急がなくていいの。結婚と同じで、よく考えないといけないことだから。」橋本奈奈は頷いた。

橋本東祐が離婚したいと言った時、橋本奈奈は熱心に支持する様子を見せなかった。今、橋本東祐が躊躇している時も、橋本奈奈は失望を見せなかった。

結局のところ、あの日父が手術室に運ばれた件も、あまりにも簡単に解決してしまったからだ。

彼女は一度死を経験した人間で、死を経験した人間だけが絶望とは何かを知っている。

父は最近の母の行動に腹を立てて、離婚を考えただけなのだ。

橋本東祐がこのような態度を取れば取るほど、橋本奈奈は自分が先ほど言った言葉に自信を持った。

「お父さん、ゆっくり休んでて。私は部屋に戻るわ。」橋本東祐が伊藤佳代と離婚するかどうかには触れず、橋本奈奈は自分の持っているお金の方が気になっていた。

おそらく大切なものを全て斎藤家に置いておく習慣があるからか、ポケットにはかなりの額のお金があり、橋本奈奈は特に不安を感じていた。お金を斎藤家に置いておかないと安心できない感覚があった。

しかし、もうこんな遅い時間に出かけるのは、説明が難しいだろう。

ずっと身につけておくのも面倒で、もし見つかったら、同じように説明に時間を取られることになる。