第178章 なぜ珍しく素直になったのか

「平等に扱うとか、誰かに偏らないとか、もう一人を不機嫌にさせたり、不当な扱いをしたりするなんて、今日一体どういうつもりなの?!私を狙っているの?それとも絵里子を狙っているの?」

橋本奈奈は目を見開き、信じられない様子で伊藤佳代を見つめた。母の今の言葉は、橋本絵里子と父との関係を離間させようとしているのではないか?

橋本奈奈は聞きたかった。母のその言葉は一体どういう意図なのか?

「公平だって?いいだろう、なぜ奈奈にさせないのか、その理由を教えてやる」橋本東祐は怒りながら息を荒げた。「この部屋を見てみろ。家の他の場所と比べてどうだ、きれいだろう?このベッドを見て、布団に触ってみろ。明らかにシーツも全部洗濯して、日に干してある!まさか、これがお前と絵里子がやったとは言わないだろう?この部屋がこんなにきれいなのは、お前たち二人が掃除したとでも?」

橋本東祐が言い出したことで、伊藤佳代はさらに腹が立った。

こんなに大きな家で、たくさんの部屋があるのに、奈奈はどの部屋も掃除せず、なぜこの部屋だけをこんなにきれいにしたのか。奈奈は、もしかして、あるいはすでに橋本さんとの関係がうまくいかなくなることを計算して、喧嘩になることを見越して、橋本さんのために前もって部屋を用意したのか?

もしこの部屋が汚くて散らかっていて、じめじめしていたら、橋本さんの体調では、たとえ橋本さんが望んでも住めないはずだ。

夫婦喧嘩は枕を並べて寝れば自然と仲直りするもの。同じベッドで、同じ布団をかぶって寝れば、どんな問題も解決できるはずだ。

彼女がどんなに大きな過ちを犯しても、数日もすれば、橋本さんは許してくれるはずだった。

橋本奈奈がこうしたのは、彼女と橋本さんの夫婦仲が良くなるのを見たくないということか?

橋本さんがこんな風になったのは、理解できない、客観的でない、きっと全て橋本奈奈が悪い方向に唆したせいに違いない!