家の中で一番大変で汚い仕事でも、伊藤佳代は橋本奈奈に押し付けたがらなかった。
今度は、橋本東祐にボールのように蹴り返されて、伊藤佳代は呆然とした。最近の橋本さんがなぜこんなに余計な口出しをするのか理解できなかった。以前は家のことは全て彼女一人で決めていたのに。
家の状況を考えると、伊藤佳代は頭が痛くなり、心も不安になった。一人で片付けるなんて、今夜は眠れそうもない。
もう橋本奈奈一人を搾取し続けることは不可能だと分かり、この家で主導権を失った伊藤佳代は霜に打たれたナスのように、すっかり元気をなくしてしまった。
しかし伊藤佳代が家に戻ると、二人の娘が橋本東祐を橋本奈奈が最初に寝ていた部屋に連れて行くのを見て、顔が紫色に変わった。「あなたたち馬鹿なの?この部屋はそんなに狭いのに、お父さんは今治療中なのに、なぜここに連れてくるの?!」