「この団地の中で斎藤家と付き合いのある人なんて数えるほどしかいないのに、うちの橋本家なんてなおさらよ。奈奈が斎藤家に何しに行くのよ?」今回は、母親として冷たいわけじゃない。あの馬鹿娘の奈奈が自分で死に道を選んだのよ。誰の家でもいいのに、よりによって斎藤家の鍵を複製して、お金まで盗むなんて。
この家には奈奈だけじゃなく、他に三人もいるのよ。
絶対に奈奈に私たち三人の人生を台無しにはさせない。奈奈が自分でした間違いなんだから、死のうが刑務所に入ろうが、この借りは奈奈一人で返すしかないわ!
「奈奈が、本当に...?」雨宮お姉さんは呆然としていた。伊藤佳代が奈奈だと言うなら、間違いないはずだ。それに、奈奈がこんなスカートを持っていたのも覚えている。
まさか、あんなに成績優秀で、挨拶するときもいつも笑顔の奈奈が、こんな泥棒まがいのことをする人間だったなんて。本当に人は見かけによらないものね。まさに奈奈のような子のことを言うんでしょうね。