家では魔王だった白洲隆が、橋本奈奈の前では不思議なことにいい子のように素直で、罰も文句も受け入れ、彼女の言うことなら何でも聞くのだった。
そのため、白洲隆の教育に関しては、橋本奈奈が白洲家と木下家の人々の中で第一候補となっていた。
警告を受けた白洲隆は、さすがに口答えをする勇気もなくなり、真面目にペンを取って問題を解き始めた。
軍事訓練の話で市場のように騒がしかった教室は、橋本奈奈と白洲隆のこの行動によって、突然静かになった。
多くの生徒が呆然と橋本奈奈を見つめていた。入学初日からこんなに真面目なのか?橋本奈奈があまりにも真面目すぎて、自分たちが不真面目に見えてしまう。
「見せびらかしね。まるで自分が中学校の一位だってことを知らせたがってるみたい。見え透いた演技よ」橋本奈奈の一存でクラスの雰囲気が変わってしまったことに、井上雨子は特に気分が悪かった。
井上雨子は以前クラス委員を務めていた時、朝の自習で生徒たちに一緒に本を読ませようとしたが、下級生たちは全く協力的ではなく、一度など声が枯れるまで叫んでも、クラスの規律を保つことができなかった。
しかし今日、橋本奈奈はクラスの規律など気にせず、ただ自分のことをしているだけなのに、彼女の影響力で教室が静かになってしまった。これを見た井上雨子は心の中で納得がいかなかった。
みんなが最初は橋本奈奈を拒絶していたのに、彼女のクラスへの影響力がこんなにも大きいなんて。井上雨子は歯ぎしりしながら、やはり橋本奈奈は自分の天敵だと思った。彼女がいる限り、楽しく学校に通うことなどできない!
本当に嫌だ!
「あなたにそんなことができるの?」風紀委員で、橋本奈奈のルームメイトでもある鈴木香織は眉をひそめ、冷たく言った。「酸っぱい葡萄ね。橋本さんは確かに特別よ。彼女のような態度で中学校の一位になれたんだから、何か問題でも?」
井上雨子にそう言いながら、鈴木香織も自分自身に警告を発していた。
高校の授業は中学校よりもずっと難しい。平泉高校に合格したとはいえ、重点大学に合格したわけではないので、絶対に気を抜くことはできない。学習は川を遡るようなもので、前進しなければ後退するだけだ。橋本奈奈から学ぶべきで、学習により多くの心を注ぐべきだ。高校三年間を無駄にしないように。