「やはり噂に聞くより実物の方が悪いな」来客は客だというのに、この態度はあまりにも失礼すぎる。橋本さんが娶ったこの女は噂以上に理不尽で、人としての最も基本的な道理や礼儀すら分からないようだ。
「吉田さん、申し訳ない、待たせてしまって」声を聞いて出てきた橋本東祐は伊藤佳代を冷たく一瞥してから、荷物を吉田さんの三輪車に積み始めた。「わざわざ来てもらって、ご苦労様です」
「いやいや、大したことじゃない、手伝うよ」吉田さんは三輪車から降りて、橋本家の方へ歩いていった。「これだけ?」荷物がこんなに少ないのか。
「ああ、これだけだ」
「じゃあ、橋本さん、休んでいてください。この程度なら私一人で運べますから。奈奈ちゃんは?」
吉田さんが言い終わるか否か、橋本奈奈がカバンを背負って部屋から出てきた。「おじさん、こんにちは」
「君が奈奈ちゃんかい、可愛いねえ。橋本さん、お幸せですね」吉田さんは橋本東祐に親指を立てた。「奈奈ちゃん、他に荷物があったら、おじさんが一緒に運ぶよ」
「もうありません、これだけです」
「よし、全部おじさんに任せて」吉田さんは力が強く、一度にたくさんの荷物を運べた。ただ、奈奈の服が入った袋を持ち上げた時、少し驚いた。このお嬢ちゃんの服があまりにも少ない、数着しかないじゃないか。
「東祐、あなた、何をするつもり?それに、あなたも、うちの物を早く置いて、置いて!」家に入った伊藤佳代は心配になり、急いで吉田さんの手から荷物を奪い返そうとした。
「お父さん、それって全部お父さんと奈奈の物じゃない?どうして持っていかれるの?」橋本絵里子の表情も強張り、笑顔が引きつっていた。
ある可能性を思いついた絵里子は、怖くなって伊藤佳代の側に走り寄り、彼女の服をしっかりと掴んだ。
吉田さんは男性だ。彼が嫌がれば、伊藤佳代が彼の手から荷物を奪うことなどできるはずがない。
吉田さんが一歩引き、橋本東祐が伊藤佳代を引っ張ると、吉田さんはスムーズに荷物を外に運び出し、三輪車に積んだ。橋本東祐父娘の荷物を見て、この小さな三輪車さえも一杯にならないことに、吉田さんは溜息をつきながら首を振った。家にこんな家計を破綻させる女がいては、橋本さんの暮らしは本当に大変だろう。
「東祐、東祐、あなた、何をするつもり?」伊藤佳代は目に涙を浮かべ、怯え、恐れていた。