橋本奈奈は起き上がって言った。「お父さん、お腹すいた。いつ食べられるの?」
「すぐだよ、今から魚の準備をするから。」奈奈がお腹を空かせていると聞いた橋本東祐は、伊藤佳代のことは気にせず、新鮮な唐辛子を持って台所へ向かった。
「ちょっと待って、私がやりますから。」伊藤佳代は腹立たしげに橋本奈奈を一瞥した。奈奈のこの態度から、もう二度と口を開かないことは明らかだった。今日こそ、キグチに大量の唐辛子を入れようと決意を固めた。
伊藤佳代が奈奈を睨みつけた時、奈奈はすでに本を読むために俯いていた。
伊藤佳代が立ち去ってから、奈奈は本を下ろした。あの母親のような人は、相手にすればするほど調子に乗るのだ。
「奈奈、やっぱり私より早く帰ってきたんだね。」かばんを背負って学校から帰ってきた橋本絵里子は、橋本東祐が借りている場所まで来るのに、以前より30分以上多くの時間がかかった。
自分は疲れ果てているのに、奈奈は楽だ。住んでいる場所が学校の近くだから。橋本絵里子の表情が一瞬曇った。
「私もそんなに早く着いたわけじゃないよ。付属高校の下校時間は平泉高校より早いみたいだね。」奈奈は手を下ろした。比べてみて初めて気づいたが、付属高校の授業は平泉高校よりもっと厳しいはずなのに、なぜか絵里子は週末になるといつも早く帰ってくる。
「奈奈、あなたたちも月例テストあったでしょう?どうだった?」橋本絵里子は笑って、奈奈の先ほどの質問をかわした。
「あったよ。ということは、お姉ちゃんもテストあったんでしょう?」奈奈は橋本絵里子を見つめた。「様子を見ると、今回はうまくいったみたいだね。」
橋本絵里子が付属高校に入学してから、成績は確かにかなり上がっていた。
前世では全く勉強が好きではなかった絵里子をここまで変えられるなんて、付属高校の先生たちは本当に凄い。さすが地域一番の名門で、教師陣が最も充実している高校だ。
橋本絵里子は顎を少し上げた。「まあまあかな。せいぜい前回と同じくらいよ。奈奈、あなたの成績はどうだった?平泉高校に通っている人たちは、成績がいい人が多いって聞くわ。あなたは1組だし、プレッシャーも大きいでしょう?」