第255章 天才的伊藤佳代(加更で月票を求む)

「私を泥棒だと認めさせたいの?そうじゃないのにそうだと。これのどこが私のためになるの?言ってみて、しっかり聞くから。ママ、私のことをそんなに大切に思ってるなら、どうして他人の娘が私と同じスカートを着てるだけで、その子を自分の娘だと思い込むの?ママ、私のことを大切に思ってるって言うけど、私の服のことしか見えてないんじゃない?私という人間が見えてないんじゃない?」

「人違い、人違いよ。あなたが悪いことをしたと思って、悲しくて取り乱しただけじゃない。」伊藤佳代は即座に言い返した。「それに...それに...私はあなたが間違った道を歩まないように、たとえ本当に間違ったことをしても、認めて改めさえすれば、やり直すチャンスがあることを分かってほしかったの。あなたはまだ若くて未熟だから、斎藤家の人たちがあなたの若さを見て大目に見てくれるかもしれない、そう思って心配したの。こういう間違いは、しっかりと理解させなければいけないわ。少しでも曖昧にはできないのよ!」

伊藤佳代は話すほどに自信を深めていった。「奈奈、これは非常に重大な問題なの。厳しく接する人こそが、本当にあなたのことを思ってる人なのよ。この件で、誰が味方で誰が他人なのか、よく分かるでしょう。他人というのは、あなたが間違いを犯しても大丈夫だと言って、どんどん深みにはまらせる人のこと。家族や親族だけが、世間の目を気にせず、何を恐れることもなく、あなたの過ちを正し、一緒に責任を負ってくれる人なの。家族に泥棒がいるなんて、いい評判になるわけないでしょう?奈奈、私があなたを正しい道に導きたいからこそ、こうしているのよ!」

「すごい、ママ、本当にすごいわ」橋本奈奈は怒りで両手を首に当て、頭を上げた。血圧が上がりすぎないようにするためだった。

橋本奈奈はようやく理解した。前世でなぜあんなに不幸だったのかを。

橋本絵里子の口の上手さだけでなく、母親の洗脳の技術はさらに一枚上手だった。

母の言葉を聞いていると、自分が今まで考えていたことは間違っていたのではないか、実は母は娘のことを本当に考えてくれる良い母親で、自分が心が狭く、母の愛情を理解できていなかったのではないかと、疑い始めそうになった。