第270章 拒絶された

手塚勇はやっとの思いで休暇を取ることを決意し、橋本家で存在感と好感度を上げようとしたのに、まさか空振りに終わるとは思わなかった。

このように、手塚勇は意気揚々と来て、しょんぼりと帰っていく、斎藤昇の予想通りだった。

学校で授業を受けていた橋本奈奈は、手塚勇が任務終了後にわざわざ橋本の中庭まで自分に会いに来たことなど、少しも知らなかった。井上雨子が橋本奈奈の寮部屋に引っ越そうとして失敗して以来、井上雨子は橋本奈奈のことを一層目障りに感じるようになった。

井上雨子の意地悪な態度に対して、橋本奈奈はすっかり慣れっこになり、いつも通りに過ごしていた。

白井照子は明らかに井上雨子より賢かった。橋本奈奈への嫌悪感は井上雨子に劣らなかったが、人前でも後ろでも、白井照子は橋本奈奈に笑顔を向けることができた。しかし、橋本奈奈宛ての手紙には、もう二度と手を出そうとはしなかった。

入学して半学期、橋本奈奈は田中勇から送られてきた十通の手紙を次々と受け取っていた。

その束になった手紙を見て、橋本奈奈は机を軽く叩いた。二度の人生で、田中勇が一人の女の子を本気で追いかけるとき、いつもこんなに忍耐強かった。この二ヶ月間、彼女は断続的に田中勇からの手紙を受け取っていたが、一度も返事を出さなかったのに、田中勇はまるで気にも留めていないかのように、手紙を送り続けていた。

橋本奈奈は片方の口角を上げ、白洲隆の肩を叩いて言った。「私が頼んでおいた大きな封筒は?」この公文書袋のような封筒は、この時期外では買いにくかったが、白洲隆の家には沢山あった。

「もういらないのかと思ってた。」白洲隆はA4サイズほどの黄色い封筒を橋本奈奈に渡した。「こんな大きな封筒で何するの?」

「なんでもない、ちょっとゴミを処理するだけ。」橋本奈奈は田中勇から送られてきた手紙を全部封筒に入れ、さらに自分が書いた一枚も加えて、宛先を書いて切手を貼り、ポストに投函した。

「田中勇、君宛ての手紙だよ。」ほぼ一週間もしないうちに、田中勇は橋本奈奈からの手紙を受け取った。「田中勇、誰からの手紙?こんなに大きくて、中身も重そうだね、たくさん入ってるみたいだけど。」

「ありがとう。」田中勇は穏やかに笑い、封筒の差出人住所を見て微笑んだ。二ヶ月我慢したけど、橋本奈奈もついに我慢できなくなったようだ。