手塚勇はやっとの思いで休暇を取ることを決意し、橋本家で存在感と好感度を上げようとしたのに、まさか空振りに終わるとは思わなかった。
このように、手塚勇は意気揚々と来て、しょんぼりと帰っていく、斎藤昇の予想通りだった。
学校で授業を受けていた橋本奈奈は、手塚勇が任務終了後にわざわざ橋本の中庭まで自分に会いに来たことなど、少しも知らなかった。井上雨子が橋本奈奈の寮部屋に引っ越そうとして失敗して以来、井上雨子は橋本奈奈のことを一層目障りに感じるようになった。
井上雨子の意地悪な態度に対して、橋本奈奈はすっかり慣れっこになり、いつも通りに過ごしていた。
白井照子は明らかに井上雨子より賢かった。橋本奈奈への嫌悪感は井上雨子に劣らなかったが、人前でも後ろでも、白井照子は橋本奈奈に笑顔を向けることができた。しかし、橋本奈奈宛ての手紙には、もう二度と手を出そうとはしなかった。