第297章 橋本絵里子が入院

「まぶたがピクピクする?」この些細な症状について、彼女には本当に何の対処法もなく、病院に行くのも適切ではなかった。

「橋本さん、橋本さんいますか?」中庭の外から誰かの急いだ呼び声が聞こえた。

「はい、田口さん、どうしました?」団地の隣人である田口さんの声を聞いて、橋本東祐は箸を置いて外に出た。「中に入って一杯お茶でも飲みませんか?何かあったんですか?」

「お茶どころじゃないんです。」田口さんは首を振った。「橋本さん、大変です。お嬢さんの絵里子さんが転んでしまって、かなり深刻そうです。もう病院に運ばれました。伊藤佳代さんが言うには、脳震盪の疑いがあるそうで、泣き止まないほど怖がっています。詳しい状況は私も分かりませんが、医者の診断を待つしかありません。様子がおかしいと思って、お知らせに来ました。」

「なんですって?絵里子が転んだ?脳震盪って何ですか?」

「私にも分かりません。でも深刻そうに聞こえました。」田口さんは首を振った。

「奈奈、脳震盪って何か知ってるか?本当に深刻なのか?」橋本東祐は顔色を変え、慌てて橋本奈奈を見た。

橋本絵里子が脳震盪になったと聞いて、橋本奈奈は手が震え、お椀のお粥をこぼしてしまった。「の、脳震盪?」

「そう、脳震盪だ。」

「奈奈、脳震盪ってどういう状態なんだ?」橋本東祐は橋本奈奈を見つめた。その場にいる三人の中で、橋本奈奈が一番知識があったので、彼女に聞くしかなかった。

「脳震盪にも軽いものと重いものがあります。軽ければ大したことはなく、少し休めば良くなりますが、重症の場合は...」命に関わることになる。

「いけない、すぐに病院に行かなければ!」橋本奈奈の言葉が終わる前に、橋本東祐は意味を理解した。つまり、重症の場合、長女に大変なことが起こりかねない。

「そうですね、急いで見に行きましょう。お金を忘れずに持っていってください。万が一のことがあれば、お金は絶対に必要です。」田口さんはため息をついた。橋本家はここ数年、どんな不運に見舞われているのか、不幸な出来事が次々と起こっている。

「そうだ、お金を持っていかないと。」橋本東祐は家にある現金を全部持って、上着を着ながら出かけようとした。

橋本奈奈は立ち上がった。「お父さん、私も行った方がいいですか?」