第292章 保釈しないの

「奈奈、ちょっと待って。お父さんは今帰ってきたばかりで、体中埃だらけだし、臭くなってきているんだ。お湯を沸かしてくれないか?お父さんはまず風呂に入って、それから話を聞くよ」橋本東祐は不快そうに自分の服を引っ張った。この数日間外にいて、お風呂に入れなかったので、もう我慢の限界だった。

以前の橋本東祐は特にお風呂好きではなかったが、退院してからは、奈奈がよく父親の衛生管理を監督するようになった。

お風呂に慣れてしまうと、突然また以前のような何日も風呂に入らない、髪も洗わない状態に戻るのは、橋本東祐にとって本当に耐えられなかった。

「はい」橋本東祐に遮られて、奈奈は伊藤佳代のことを言い出せなかった。急いでお湯を沸かしながら言った。「お父さん、こんな遅くに帰ってきて、きっとまだ何も食べてないでしょう。まだ早いから、私が買い物に行ってきます。でも、お米はあるの?」