第302章 罠にはまる

大野宏が白洲家に長く居座れば居座るほど、白洲隆の帰宅時間も遅くなっていった。

普段ならまだしも、もう秋になって、それも深まる秋で、外は日が暮れるのが早くなってきているのに、孫がずっと外にいるなんて、白洲おじいさんが心配しないはずがない。

白洲おじいさんは白洲隆に、最近どうして家にいないのかと尋ねた。

白洲隆は率直に答えた。「僕は大野宏が嫌いなんです。大野宏を見ると気分が悪くなって、前の高校入試のことを思い出してしまうんです。僕は悲しいんです。自分の親族が、あんな大事な時に僕を陥れようとしたことが。許そうとしているんですが、心の中の壁を乗り越えられないんです。おじいちゃんは大野宏が好きで、大野宏と一緒にいると楽しいでしょう。おじいちゃんが楽しければいいんです。でも僕も不愉快な思いはしたくないから、外にいるしかないんです。大丈夫です、おじいちゃん。おじいちゃんが楽しければそれでいいんです。」