橋本奈奈のその小さな叫び声は、まさに斎藤昇の心に響き渡った。
斎藤昇は橋本奈奈の手を掴む指の力を少し緩めたが、その動きはさらに固くなった。「奈奈、俺は...」
若妻も全く分からないわけではなく、ただ彼の心が分からないだけだった。もし彼が本音を話せば、物事はもっと単純になるのではないだろうか?
斎藤昇は目標を定めたら、絶対に変えることはない。いずれ決めなければならないことだし、橋本奈奈に自分の気持ちを早めに理解してもらっても構わないと思った。部隊にいる時に、学校の男子学生に奈奈を取られてしまうのではないかと気を取られずに済むように。
「昇、奈奈、いる?」斎藤花子の声がタイミングよく現れ、斎藤昇と橋本奈奈の間の微かな甘い雰囲気を打ち破った。
さっきまで斎藤昇を押しのけられなかった橋本奈奈は驚いて急に力持ちになり、無事に斎藤昇を押しのけただけでなく、横に大きく一歩移動した。「さ、斎藤さん?」