今の彼女と橋本奈奈の関係のように、橋本奈奈は今は輝いているように見えるが、それも長くは続かないだろう。最後に笑うのは、彼女だけなのだ。
「そうね、早く帰って、服をしっかり着て、風邪を引かないようにね」伊藤佳代の心も広くなり、橋本絵里子が話題を変えたことで、すっかりその件を忘れてしまった。どうせ大野宏がどうなろうと、自分の息子ではないのだから。
ようやく母娘は橋本の中庭に戻り、伊藤佳代がまず最初にしたことは、橋本絵里子のために湯を沸かして足湯を用意し、体を温めることだった。
伊藤佳代がお湯を沸かしている間、橋本絵里子は黙って自分の部屋に戻り、ノートとペンを取り出して、そこに英単語を静かに書き込んだ。
もし橋本奈奈がいたら、橋本絵里子が覚えたその単語が、食卓で白洲成木が自分にプレゼントした本のタイトルだと気づいただろう。