第316章 虎狼の年

今の彼女と橋本奈奈の関係のように、橋本奈奈は今は輝いているように見えるが、それも長くは続かないだろう。最後に笑うのは、彼女だけなのだ。

「そうね、早く帰って、服をしっかり着て、風邪を引かないようにね」伊藤佳代の心も広くなり、橋本絵里子が話題を変えたことで、すっかりその件を忘れてしまった。どうせ大野宏がどうなろうと、自分の息子ではないのだから。

ようやく母娘は橋本の中庭に戻り、伊藤佳代がまず最初にしたことは、橋本絵里子のために湯を沸かして足湯を用意し、体を温めることだった。

伊藤佳代がお湯を沸かしている間、橋本絵里子は黙って自分の部屋に戻り、ノートとペンを取り出して、そこに英単語を静かに書き込んだ。

もし橋本奈奈がいたら、橋本絵里子が覚えたその単語が、食卓で白洲成木が自分にプレゼントした本のタイトルだと気づいただろう。

橋本絵里子は何度も確認し、スペルミスがないことを確認してから、ノートをしまい、来年の新学期に学校で聞いてみようと思った。一体どんな本なのか、橋本奈奈がこれほど欲しがり、白洲おじさんと白洲隆に探してもらうほどのものなのか。

もしこれが普通の本だとしたら、今日の食卓での出来事は、橋本奈奈が意図的に彼女を困らせようとしたことを意味する。

その本のタイトルについて、橋本絵里子はほんの数秒見ただけだったが、その短い時間で、完璧に覚えて書き留めることができた。つまり、橋本絵里子は賢いのだ。ただ、その才能を正しい方向に使っていなかっただけだ。

「何してるの?早く足を温めて、それからベッドで寝なさい。本を読みたいなら、明日にしなさい」橋本奈奈の飾り物にできそうな素晴らしい成績表と、それと比べて見劣りする橋本絵里子の成績表を思い出し、伊藤佳代はため息をつかずにはいられなかった。

絵里子は小さい頃から橋本奈奈より賢かったのに、なぜ学業では絵里子が橋本奈奈を超えられないのだろう?

絵里子を妊娠していた時、橋本さんは毎日、賢くて勉強のできる息子が欲しいと言っていた。橋本さんの描いた理想の息子像は、橋本奈奈が女の子であること以外、すべての面で完璧に一致していた。

もし絵里子が橋本奈奈のような成績を取れたら、どんなに良かっただろう。