第315章 小細工を弄する

今は月も暗く、風が強く、道も滑りやすい状態だった。

橋本東祐が真夜中に橋本奈奈を連れて帰るのは、困難なだけでなく危険でもあった。

伊藤佳代は考えていた。橋本東祐が橋本奈奈を借りている小さな家に連れて帰れないなら、彼女と一緒に橋本の中庭に帰ることができるはずだと。四人家族が同じ屋根の下で暮らせば、これまでどんな大きな対立があっても、必ず解決できると信じていた。

伊藤佳代はこの機会を利用して、橋本東祐との関係を修復しようと思っていたが、白洲成木がそう言い出したことで、彼女のすべての計画が水の泡となってしまった。

「それもいいね」橋本東祐は最初、白洲家の人に迷惑をかけるのを躊躇していたが、伊藤佳代の表情を見て、すぐに承諾した。「では、お願いします」

「構いませんよ」白洲成木の厳しい顔に珍しく笑みが浮かんだ。「奈奈という子は気に入っています。これからも奈奈をうちに遊びに来させてください」