第315章 小細工を弄する

今は月も暗く、風が強く、道も滑りやすい状態だった。

橋本東祐が真夜中に橋本奈奈を連れて帰るのは、困難なだけでなく危険でもあった。

伊藤佳代は考えていた。橋本東祐が橋本奈奈を借りている小さな家に連れて帰れないなら、彼女と一緒に橋本の中庭に帰ることができるはずだと。四人家族が同じ屋根の下で暮らせば、これまでどんな大きな対立があっても、必ず解決できると信じていた。

伊藤佳代はこの機会を利用して、橋本東祐との関係を修復しようと思っていたが、白洲成木がそう言い出したことで、彼女のすべての計画が水の泡となってしまった。

「それもいいね」橋本東祐は最初、白洲家の人に迷惑をかけるのを躊躇していたが、伊藤佳代の表情を見て、すぐに承諾した。「では、お願いします」

「構いませんよ」白洲成木の厳しい顔に珍しく笑みが浮かんだ。「奈奈という子は気に入っています。これからも奈奈をうちに遊びに来させてください」

「はい」橋本東祐は適当に返事をし、白洲成木の言葉を単なる社交辞令として受け止めた。「見送りは結構です。では、失礼します」

「お気をつけて」

白洲家の運転手が送ってくれることになり、橋本東祐と橋本奈奈は当然ながら労力を省くことができた。車の中で短い居眠りをする時間もないうちに、家に着いた。

橋本東祐と橋本奈奈が車に乗った後、伊藤佳代と橋本絵里子はまだ白洲家にいた。

伊藤佳代は青ざめた顔を引き締め、白洲成木は表情を引き締めて言った。「お二人を送らせましょうか?」

「白洲おじさん、ご親切にありがとうございます。私と母は自分で帰れます」橋本絵里子はそれほど無分別ではなかった。同じ橋本家の娘として、同じテーブルで食事をしているのに、橋本奈奈にはプレゼントがあり、自分にはない。

この点から、橋本絵里子は白洲成木の前で、自分と橋本奈奈の待遇が異なることを確信した。

橋本奈奈が送ってもらえるのはいいとして、自分も同じような待遇を期待するのは図々しすぎる。そうすれば嫌われるだけだ。