第314章 父子の寵愛争い(加更)

「奈奈?」橋本東祐は静かに呼びかけ、目配せで橋本奈奈に合図を送った。この状況で橋本奈奈は本当に何も言わないのだろうか。結局、白洲隆は彼女の言うことをよく聞くのに。

橋本東祐だけでなく、白洲おじいさんまでも期待の眼差しを橋本奈奈に向けていた。

白洲成木は冷たく、白洲隆は頑固で、父子二人とも同じように強情な性格だった。

これまで、この父子が対立すると、白洲おじいさんは息子にも孫にも手を焼いていた。

しかし今は違う。孫は父親との関係が以前より良くなったようで、孫にも大切な人ができたようだ。

そのため、白洲おじいさん自身が為す術もないこの状況で、真っ先に思い浮かべたのが橋本奈奈だった。

「お父さん、心配しないで。二人が喧嘩するのは良いことよ。黙っているほうが問題。喧嘩することで絆が深まるの。ついでに、白洲隆も白洲おじさんから戦略と戦術について学べるわ」と橋本奈奈はゆっくりと話し、目は本から離れず、その夢中な様子は目が飛び出して本に張り付いてしまいそうなほどだった。