「そうだな」と言うと、斎藤旦那様は大きく攻め、「將軍!」と叫んだ。
「……」斎藤花子は一瞬固まった。「もうこんなに早く將軍とは、早すぎるでしょう。いや、いや、やっぱり元の手を指すわ。私の將軍は取らせないわ」
「百手先を譲っても、おじいちゃんには勝てないよ」斎藤昇は斎藤花子が散らかした将棋盤を見て首を振った。「ちょっと手伝ってくれないか。終わったら、また将棋を指せばいい」
「何を手伝うの?」
惨めに負けた斎藤花子は急いで駒を置き、斎藤昇の後について行った。
斎藤花子は斎藤旦那様の前では子供のように甘えているが、部隊では女性指揮官として、女性兵士の訓練を担当し、とても威厳があった。
しかし、斎藤花子も気づいていた。部隊では威風堂々としている自分が、なぜ家に帰るとこんなに情けない状況になるのだろうか。