第330章 どこが合わないのか、話し合って解決しよう

「結婚」という言葉を聞いて、橋本奈奈は呆然としてしまった。「斎藤お兄さん、あ、あなた、何かショックを受けたんじゃない?」

「私があなたと結婚したいと思っているのを信じられないの?」

もちろん信じられない!

橋本奈奈の心の中の小人が叫んでいた。斎藤お兄さんは未来の司令官で、前途は洋々としていて、今の斎藤おじさんよりもっと凄い人になるはず。前世で、斎藤お兄さんは結婚していたはずで、しかも釣り合いの取れた家柄の娘と結婚したはずだった。

私には何もない。何一つない。

斎藤お兄さんが助けてくれなかったら、自分一人の努力だけでは、前世よりもそれほど良い生活が送れたかどうかも分からない。

私は一番の美人でもないし、頭も一番良いわけでもない。人当たりも良くないし、男性の心をつかむこともできない。斎藤お兄さんが私に好感を持ってくれただけでも、私の人徳が爆発的に良かったからだ。今、斎藤お兄さんが私のことを好きだと言うだけでなく、結婚までしたいと言うなんて、橋本奈奈は、斎藤昇が今日きっと何かショックを受けて、こんな狂った話をしているのだと思った。

人は興奮している時に言う言葉は信じられない。冷静になれば、斎藤お兄さんはきっと後悔するはずだ。

だから斎藤お兄さんは冷静ではない、私が冷静にならなければいけない。

「斎藤お兄さん、実は帰り道もそんなに遠くないし、今日は大晦日だし、こんなに遅いから、あなたは家族と一緒に過ごすべきよ。私一人で帰れるから、怖くないわ、本当に、全然怖くない。」このまま斎藤お兄さんにこんな話を続けさせたら、どんなに冷静でも斎藤お兄さんと一緒に狂ってしまいそうだった。

「奈奈!」斎藤昇の一声は、軽くも重くもなく、しかし部隊で「休め、気をつけ」と号令をかけるように厳しく、橋本奈奈の逃げ出そうとした足を思わず止めさせ、その場に立たせた。「軍人はこういう事を決して冗談で言わない。私の言葉を真剣に、慎重に考えて、客観的で理性的な決定を下してほしい。」

「……」全身が凍りついた橋本奈奈は斎藤昇の言葉を聞いて、怒りと笑いが込み上げてきた。彼女は軍人じゃないのに、何でも規則正しく、きちんとしなければならないわけじゃない。軍令は山のごとしというのは、彼女には通用しない。

斎藤お兄さんは告白して求婚しているのか、それとも彼女を部下の新兵のように扱っているのか?