第368章 姉さん、おしゃべりしましょう

伊藤佳代が反応する間もなく、まるでネズミのように素早く、暗闇から飛び出して、最速で車の中に入り込み、野村涼子の隣に座った。「司令官夫人、あなたの家の車は本当に大きくて素晴らしいですね。私、こんな素敵な車に乗ったことがありません。あなたのおかげで、こんな車に乗れるなんて、この人生も満足です」と言いながら、伊藤佳代は本当に珍しそうに手で車内のあちこちを触り、目も東西に泳がせ、止まる様子がなかった。

「……」

「……」

「……」

斎藤家の母子三人は言葉を失い、特に斎藤花子は、伊藤佳代を止めようと手を伸ばしかけていた。

軍人である自分が一般人さえも止められなかったことを考えると、斎藤花子は自分の腕前の衰えを嘆くべきか、それとも伊藤佳代の厚かましさが尋常でないレベルに達していることに「感心」すべきか、分からなかった。