佐山明の担任は最初から最後まで一言も言わなかったが、佐山明の担任は知っていた。今回の件で、おそらく叱責を受けることになるだろうと。
しかし橋本奈奈の担任が受ける批判は自分よりも多いだろうと考えると、佐山明の担任の心はちょっと楽になった。大きな責任は彼にはない。「まだ行かないの?」佐山明を睨みつけた。この佐山明も本当に面倒を起こすものだ。若いくせに、もう彼女を作ろうとするなんて。どうして勉強に少しでも多くの心を向けないのか、良い成績を取ってみろよ。
今回、校長の怒りは小さくない。佐山明も良い目は見ないだろうが、橋本絵里子と彼女の担任こそが、最も災難に遭う二人だ。
「違う、違うよ…」伊藤佳代は呆然とした。彼女は橋本絵里子をどれだけ信じていても、目の前の状況を見れば分かる。皆が橋本絵里子のカンニングを確信し、皆が佐山明の言葉を信じている。「橋本さん、絵里子がこんなに冤罪を被って、もう黄河に飛び込みそうなのに、あなたは一言も助けないの?絵里子はカンニングなんてしていない、彼女は冤罪よ。明らかにこの佐山明という人が、橋本奈奈を追いかけて失敗したから、絵里子に嫌がらせをしているだけ。こんな馬鹿げた話を、校長先生も先生方も、見抜けないの?」