賀川礼は家に二日ほど長く滞在するつもりだったが、鐘见寧に適応する時間をもっと与えたいと思っていた。しかし、高槻柏宇が落ち着かない様子だったため、彼は心配になり、その夜のうちに青水市へ戻ることにした。
鈴木最上は運転席で既に眠りこけていた。
既に結婚契約も結び、彼女も家にいるのに、一体どこへ行くというのだろう?
夜通し急いで戻る必要があるのだろうか?
彼には理解できず、尋ねた。「旦那様、そんなに急いで戻る必要はないのでは?」
賀川礼はただ一言、「お前は結婚していないから分からないんだ」と言った。
鈴木最上は言葉を失った。あなただって結婚してまだ数日じゃないですか!
——
鐘见寧は全く眠れなかった。簡単に身支度を整え、パジャマに着替えて階下に降りた時、まだ五時過ぎだったが、夏の日は長く、既に明るくなっていた。
賀川礼は石組みの水景の傍に立ち、表情は厳しかった。
機嫌が良くなさそうだった。
「賀川さん、私、魚の餌やりをしましたよ」と鐘见寧が先に口を開いた。
「分かっている」
「え?」
「魚が一匹、食べ過ぎで死にそうだ」
「……」
鐘见寧はそれを聞いて、急いで前に出た。
確かに白尾赤腹の魚が一匹、腹を上にして水面に浮いていた。
鐘见寧は昨夜気分が良かったため、確かに餌を多めにやってしまい、魚を食べ過ぎで死なせてしまったとは思わなかった。
「賀川さん、わざとじゃないんです」
彼女は慌てて脇にある小さな魚網を取り、その死んだ魚を掬い上げようとした。
しかしその魚に触れた途端、魚は突然身を起こし、暴れて尾を振り、池の水を跳ね上げた。鐘见寧はそれが「仮死」だったとは思わず、驚いて後ろに下がったところ、思いがけず男性の胸に倒れ込んでしまった。
賀川礼は長い腕を伸ばし、指を彼女の腰に添えた。
掌の温もりが服を通して焼けるように熱く、彼女の体は緊張で固まった。
彼女は本能的に手の中の魚網を握りしめ、呼吸が乱れた。
「大丈夫か?」
近すぎる。
彼の吐息が耳元を撫で、侵略的な木の香りが、かすかなタバコの香りと共に彼女を包み込んだ。
まるで熱が四肢百骸に染み込んでいくようだった。
「大丈夫です」鐘见寧は逃れようとしたが、抜け出せないことに気付いた。「賀川さん……」