044 鐘見さん、いくらで買えますか?

賀川野は写真を撮り終えると、横目で義姉を見た。鐘见寧は機嫌が良さそうだったので、藤田瑞贵を見かけたことは言わないことにした。

しかし、すぐに、

彼は目の前の甘い空気に辟易した。

鐘见寧はステーキを注文し、礼は親切にも切り分けてから彼女に渡した。

礼が黒トリュフのクリームパスタを注文すると、鐘见寧がちらりと見ただけで、彼は特別に取り分けて彼女に差し出した。「食べてみる?」

賀川野は彼女の斜め向かいに座っていた。鐘见寧は断らなかった。「ありがとう」

「兄さん、私も...」

賀川野が言い終わる前に、兄が突然威圧的な目つきで彼を見つめ、彼は心臓が震えるほど怖くなった。

言葉を途中で変えて、「私もレモン水が飲みたいな」

レモン水は礼の手元にあった。

鐘见寧は普段から食事制限をしているが、この日は珍しく多く食べた。

「美味しい?」礼は何気なく尋ねた。

「うん」

「じゃあ、これからも一緒に来よう」

鐘见寧は一瞬戸惑った。彼女は今少し混乱していた。気のせいだろうか?時々、礼がこの結婚を真剣に考えているように感じることがある。それとも彼の演技が上手すぎて、場を取り繕うのが上手いだけなのか?弟の前であまりにも完璧に装っているのか?

「兄さん、姉さんと食事の後、他に予定ある?」賀川野は気が利く弟だった。

家では義姉と呼び、外では姉と呼ぶ。

正直なところ、彼はグループチャットで愚痴ったことがある。

結婚したのに、なぜ家族みんなでこそこそしなければならないのか?

「この後の予定?」鐘见寧は礼を見て、弟の口を止めてくれることを期待した。

「普段デートするときは何をするの?」賀川野は好奇心旺盛だった。結局のところ、兄は子供の頃から大人ぶっていたから。

「普通のカップルはデートで何をする?」礼は弟の方を見た。

賀川野は呆然とした。

二人はもう結婚してるのに?なぜ独身の俺に聞くんだ!

食事が終わりに近づいた頃、礼は電話をかけるために席を外し、賀川野は携帯をいじっていた。鐘见寧がトイレに行くと言っても、特に気にも留めなかった。

実は鐘见寧は会計に行ったのだ。

この間、礼には随分と助けてもらった。デートと言っても、本当のデートだとは思えない。結婚前から貯金はあったが、その時は使うのを惜しんでいた。でも一食くらいなら奢れる。