鐘見寧は呆気に取られた。この子の目は大丈夫なのだろうか?
鈴木最上は思わず「プッ」と笑ってしまい、賀川礼は眉を上げて彼を見た。「そんなに面白いか?」
「い、いえ、面白くありません」
「鐘見家に行くべきだな」
鐘見家の話が出て、鐘見寧も賀川礼を見上げた。彼は淡々と言った。「お前のドレスが汚されたんだ。賠償を求めに行くべきだ。お金がもらえるなら、もらわない手はない」
鈴木最上は行きたくなかったが、弁護士に任せようと思った矢先、賀川野が飛び出してきて、自分が行きたいと言い出した。
仕方なく、この若様に付き添うことになった。
普段はぼんやりしている賀川野だが、バカではない。彼も目的があって同行したのだ。助手席に座ると、さも何気なく尋ねた。「兄さんは義姉さんに一目惚れしたの?」