エレベーターがゆっくりと上昇する中、鐘見月は彼女を横目で見た。鐘见寧は背が高く脚が長く、ダンスのおかげで立ち姿も背筋がピンと伸びていて、気品が抜群だった。
彼女のような人は、ぼろ布を纏っていても美しく見える。
「コホン」鐘見月が咳をした。顔の整形した部分が炎症を起こし、腫れが引いた後は見た目は悪くなかった。
鐘见寧は完全に無視した。
「お兄さん、このエレベーターの中、何か臭くない?」
「え?」藤田瑞贵は戸惑った。「どこが臭いの?あなたの香水の匂いじゃない?」
鐘見月は彼を睨みつけた。「香水なんかじゃないわ、あれは妖狐の匂いよ」
藤田瑞贵は呆然とした。
鐘見月は軽く鼻を鳴らした。「ある人は清楚ぶってるけど、男を誘惑する手口は上手いものね。高槻柏宇は以前から彼女の尻を追いかけ回してたし、今度は賀川さんよ」
「ある人の周りの男は、途切れることなく次から次へと」
「いつも男たちが彼女の言いなりになってる。さぞかし手管を使ってるんでしょうね。普段は清楚ぶって...むっ!」
鐘見月の言葉は、藤田瑞贵に口を塞がれて途切れた。
そしてエレベーターは目的の階に到着した。
鐘見月は眉をひそめた:
彼女もここに住んでるの?
鐘见寧は去る前に、振り返って彼女を一瞥した。
「どんなに良い香水でも、あなたの口から出る臭いは消せないでしょうね!」
彼女が遠ざかったのを確認してから、藤田瑞贵は鐘見月の手を放した。それに彼女は激怒した:「藤田瑞贵、何するのよ」
「それは僕が聞きたいよ。また彼女に喧嘩を売って何になるの?」
「あんたに関係ないでしょ!」
「彼女に対抗して、今まで得したことある?まだ教訓を学べないの?前回、頭を押さえつけられて全身びしょ濡れになったのでは足りない?あの賀川さんは普通の人じゃないよ。自分で馬鹿なことをしたいなら勝手にすれば?僕を巻き込まないでよ!」
「臆病者!役立たずの廃物!」
「僕は廃物だよ。あなたは凄い、偉い。でも鼻を歪められないようにね」
「あんた...」
鐘見月は腹立ちを覚えた。彼女の心には常に煮え滾るような思いがあった。
鐘见寧が涙を流して土下座して懇願する姿を見たかった。