彼の言葉に恥ずかしくなった鐘见寧は洗面所に入り、胸元に赤い痕が残っているのに気づいた。
関係を持つのは時間の問題だと思っていたが、彼らの関係では子供を作るのは適切ではなく、避妊は必須だと。
蛇口をひねり、冷水で顔を洗う。
鐘见寧は次第に冷静さを取り戻し、頭の中で鐘見曜が言った言葉が繰り返し響く。
賀川さんは彼女のことが好きだと……
それも並々ならぬ好意を。
聞いてみたい気持ちはあったが、一度口にして否定的な答えを得たら、これからの二人の関係が気まずくなるのが怖かった。
賭けるのが怖かった。
——
翌日、見送り。
鐘见寧は梁井佳音に自作の合香珠を贈った。
香札と線香を用意し、梁井佳音に賀川大婆様への手渡しを頼んだ。「中にはライチの香りがあって、秋になったので桂花の香札も作りました。それに二蘇旧局、雪中春信もあります。」