区役所?
婚姻届を出しに!
賀川野は瞬時に元気になった。
鐘见寧は今日戸籍簿を受け取ったばかりで、彼が早めにと言っていたのは知っていたが、こんなに早くスケジュールに入れるとは思っていなかった。彼女の驚きに気づいた賀川礼は眉を上げ、「明日、他の予定がある?」
「ないわ」鐘见寧は首を振った。
ただ、彼女の頭の中は鐘見曜の言葉でいっぱいで、振り向くと、目立つ場所にあるヒヤシンスの花束が目に入った。
「お嫂さん、これは兄さんからのプレゼントです」賀川野が先に言った。
鐘见寧は花束を抱きしめ、目を細めて賀川礼を見た。「ありがとう」
彼女が花を持って部屋に戻ると、賀川野は興奮した表情で兄の前に寄って、「兄さん、明日何時に婚姻届を出しに行くの?僕も連れて行って」
「お前が何しに来る?」
「撮影するよ。兄さんとお嫂さんの大切な瞬間、素敵な時間を記録するんだ」
「素敵な瞬間は、レンズで記録するものじゃない」
「じゃあ、何で記録するの?」
「心で」
賀川野は気持ち悪くて鳥肌が立ち、部屋に逃げ帰ると、【青水旅行班】グループで猛烈な投稿を始めた。
ブレード:【みんな、重大ニュース。兄さんが明日お嫂さんと婚姻届を出しに行くよ】
賀川様:【今頃婚姻届?】
【このバカ者、前に家に連れて来た時は、もう済んでるかと思ったのに、結局名も分からない野男だったとはな】
全員:【……】
野男?
こんな言葉を言えるのは、お爺さんだけだ。
【急いで家に戸籍簿を取りに帰ったから、もうあの娘を落としたと思ったのに、随分と平然としているな】
ブレード:【演技です】
【最近、お嫂さんと一緒に育った弟が戻って来て、血のつながりはないけど、お嫂さんのことが好きで、兄さんは二人が話してるのを見てすごく嫉妬してて、姉弟が昔話してるのに、尾行までして……】
やり取りの中で、賀川野は兄の秘密をすべて暴露した。
賀川様:【お前の父は?】
ブレード:【母さんと遊びに行ってて、僕一人を家に置き去りにして大魔王と対面させられてる。こんなに弱くて無力な僕が可哀想】
グループ内で、賀川様が大金を送金した。
賀川野に明日、賀川礼と鐘见寧の婚姻届提出の瞬間を撮影するようにと。
ブレード:【お爺さん、太っ腹!】
【必ず任務完了させます】
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